イオン導電性高分子アクチュエータは,電解液中において電場を印可すると水和したカウンターイオンが陰極に移動し,陰極側が膨潤,陽極側が収縮することで湾曲する特徴を持つ.本研究では,イオン導電性高分子アクチュエータを長時間繰返し変形させた場合の高分子電解質膜と電極金属における機械的および電気化学的損傷について調査し,損傷メカニズムを解明することを目的とした. 前年度までに,繰返し変形を与えた際の電極金属および高分子電解質膜の疲労損傷について調査した.今年度は,追加実験結果を行いながら,アクチュエータの長期駆動の際の損傷メカニズムについて考察した.その結果,繰返し動作時の電極金属表面のき裂発生,それに伴う表面抵抗値の増加,さらに,印加電圧の上昇によるカウンターイオン移動量の変化により,アクチュエータの振幅が一定にならず,繰返し変形時に大きくばらつく原因になっていることがわかった.そのため,電極金属および高分子電解質膜の疲労損傷による機械的特性の低下が,長期間アクチュエータを駆動させる際の問題となりうることがわかり,アクチュエータを設計する際には耐疲労特性,それを考慮したシステム設計を行う必要がある. また,実際に使用する際は複数のアクチュエータを積層して使うことが考えられているため,アクチュエータの多層化を行い,発生力を理論及び実験により求め,ソフトアクチュエータとしての性能を評価し,実際の筋肉の出力と同等の出力が得られることを確認した.
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