研究課題/領域番号 |
15K05692
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
金子 堅司 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (40016803)
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研究分担者 |
荒井 正行 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (40371314)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遮熱被膜 / せん断剥離 / 剥離強度基準 / 空孔率依存性 / 被膜強度 |
研究実績の概要 |
1600℃級ガスタービンの翼に利用が検討されているボイドを有する超高温遮熱セラミックコーティングの正確な寿命評価や長寿命化のための検討を精度よく行うため,本研究では高温での酸化や熱負荷の繰り返しを受けたボイドを有する遮熱被膜の剥離強度および熱伝導特性を正確に評価し、その空孔率依存性について実験的に明らかにする。 昨年度において行う予定であったねじりピンテスト法による剥離強度実験は、試料作成に被膜溶射段階で失敗したため、行うことができず被膜剥離実験が今年度にずれ込んだ。研究の遅延はあったが、試料の形状・構造を見直し、遮熱被膜の塗布が問題なく行える技術の進化があった。今年度は当初の予定通り4種類のボイド率を有する遮熱被膜の剥離強度実験を行い一応の結果を得た。が、ボイド率が高くなると被膜自体の強度の低下が著しく、界面での剥離強度の測定自体が無意味となることを明らかにした。また、今回の実験結果では加熱処理による界面剥離強度の向上は観察されなかった。むしろ、低下した。これについては加熱処理中~処理後の熱応力が界面にダメージを与えた可能性も考えられるので再度検討する予定である。 得られた剥離強度実験結果から有限要素解析によって臨界剥離条件を求める必要がある。そのためのボイド率が異なる各被膜の変形特性を求めた。被膜に硬質ボール圧子を押し込むときの押し込み深さを測定し、有限要素法とカルマンフィルターを用いた逆解析による被膜の変形特性式の係数を探索する手法によって被膜の弾塑性構成曲線を得た。なお、ボイドを含む被膜であっても均質体と捉えての平均変形特性式である。以上の検討結果を用いて、来年度はボイドを有する遮熱被膜の高温熱負荷後のせん断剥離強度および被膜自体の強度評価を行うとともに疲労強度の検討のための試料作成・加熱処理・疲労実験を順次行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年のピンテスト試料のトラブルにより、実験予定が大幅に遅延する事態となった。逆に、試料の形状を改善し、作成しやすくかつ扱いやすい試料とすることができたのであるが、試料の加熱処理は装置の能力から一つずつ行わざるを得ず、相当の時間を要したため思ったほど研究の遅延を取り戻すことができなかった。被膜の熱伝導特性についても加熱処理が必要なためほとんど取りかかることができなかった。また、ボイド率が高い被膜では界面ではなく被膜の内部での破断が生じたことから破断面の角度などをレーザー顕微鏡で測定するなどの予期しない作業工程の増加もあって当面の目標であったボイドを有する高機能遮熱被膜のせん断剥離強度および熱伝導率の空孔率依存性の評価が未達である。 しかしながら一方で有限要素法による解析手法について習熟した状況にもあり、被膜自体の変形特性が求まっているので、被膜のせん断剥離強度基準とボイド率が高い被膜の被膜強度解析は速やかかつ円滑に進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記被膜のせん断剥離強度基準とボイド率が高い被膜の被膜強度解析が終了すれば、次の目標はせん断疲労強度の空孔率依存性について定量的な評価を行うことである。疲労試験についてはすでに試作したピンテスト専用の引張りねじり複合負荷疲労試験装置を用いるため、試料の作成を行えば特段の支障はない。 本研究の次の段階では高温熱負荷後の熱伝導率の空孔率依存性について定量的な評価を行うことになる。これらが順調に進めば、研究成果を国際的な学術雑誌に投稿する作業もあることから、来年度の研究の推進はこの段階で終了する見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に試料の作成においてトラブルがあったため研究の進展が全体的に遅れている。今年度に作成して実験を進める予定であった疲労剥離強度実験が来年度にずれ込んだためその関連の昨年度の予算の執行ができなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
従って繰越した予算は疲労剥離強度試験用の試料の作成と実験遂行上の諸費用に使用する。
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