研究課題/領域番号 |
15K05696
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
冨田 佳宏 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (10031147)
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研究分担者 |
高木 知弘 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (50294260)
屋代 如月 岐阜大学, 工学部, 教授 (50311775)
内田 真 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90432624)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子鎖網目理論 / 拡張8鎖モデル / ひずみ速度温度依存性構成式 / 変形速度履歴依存性構成式 / 有限要素法 / 均質化法 |
研究実績の概要 |
軽量,高強度でしかも耐久性に優れた高分子材の使途を飛躍的に拡大するために不可欠な高分子材特有の力学的特性ならびに強度の適切な評価をめざし,負荷方向急変時に見られる変形抵抗の特異な変化を表現可能な応答モデルを構築した.これは, 1本の高分子鎖の周囲の分子鎖との相互作用のもとでの変形履歴依存性変形応答によりもたらされるものと考え,分子鎖方向と垂直方向の配向硬化の差によって分子鎖のある限度を超えた変形によって不安定現象が発生し,鎖方向の小さな変形の変化のもとで荷重の急変をもたらされるものとしている. 提案したモデルを高分子鎖の集合応答を表現可能な粗視化した,非アッフィン分子鎖網目モデルとひずみ速度依存性を表現するダッシュポッドから構成される一般化モデルに導入した. これは,8鎖モデルのランジャバンスプリングをランジャバンスプリングならびにダッシュポッドからなる標準モデルで置換したモデルであり,ランジャバンスプリングの応答に変形履歴依存性が導入されているところが提案したモデルの新たな特徴である. さらに,構築したモデルを基に,その応答を客観的な応力速度とひずみ速度関係を表す構成式の形式にて表現する枠組みを構築した. 複雑な問題の数値シミュレーションに対してこのような構成式の導入を可能とする,高度化した有限要素法ならびに均質化法を新たに提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子材料の変形過程における結合力の弱い物理架橋点の消滅に加えて最近の実験事実を反映させた初期の段階における化学架橋点の消滅を考慮した非アフィン分子鎖網目モデルを構築し,提案した構成式を充填ゴムの評価に用いている.しかしながら,粘弾性現象や架橋点の消滅が顕在化しないほどの低ひずみ域でもヒステリシスの発現が見られることは,ヒステリシスの発現には上記以外の要因が存在することが示唆される. そこで本研究では,ゴムの繰り返し変形過程において,負荷方向の急変時発生する大きな応力変化とそれが変形の進行とともに緩和されていく実験事実に注目した.この現象を,変形方向が急変するとゴム内部の分子鎖に対する周囲の分子鎖からの拘束が強くなり,変形方向急変直後小さい変形量で大きな応力の変化をもたらすと考え,分子鎖の剛性の一時的な変化として捉えることにより表現した.そこで,ゴムの弾性剛性をゴム内に発生する微視組織の変化に依存する部分と負荷履歴急変による部分によって表し,実験結果に対応して変形とともにその割合が変化するモデルを提案している. さらに,分子鎖の初期分布に不均一性が存在する場合,剛性の急変の影響が拡大することもシミュレーションにより確認している.複雑な問題の数値シミュレーションに対してこのような構成式の導入を可能とするように,高度化した有限要素法ならびに均質化法を定式化している.
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今後の研究の推進方策 |
提案した構成式の妥当性の検証のために未充填高分子材の応答評価実験によって得られた繰返し負荷のもとにおける応力とストレッチの関係と提案した構成式によって予知した結果との対応性を評価する.特に,得られた結果と既存の実験結果の負荷方向変化直後の急激な応力の低下に注目し,提案したモデルの妥当性を評価し,問題点ならびに修正箇所を抽出し,高精度化の可能性を検討する. CBを充填することにより,ゴム材は弾性率,引張強度,破断エネルギなどが大幅に増大する.シリカ充填ゴムにおいては,シリカ粒子とゴムの親和性を制御するために結合剤が添加され,それがゴムの分子鎖を結合するので,CB粒子の場合よりも特性の制御幅が拡大する.このようなゴムにおいても見られる負荷方向急変直後の応力の急降下現象については検討する.そのために,提案した均質化法を用いて充填高分子材の特性をシミュレーションにより評価する.さらに,構築した非晶相の構成式を結晶性高分子材のマルチスケールモデルの非晶相に適用することによって,強度材としての工業的利用が期待される結晶性高分子材の構成式の高度化を図る.結晶性高分子材においても,充填粒子の寸法,体積含有率,分布形態ならびに結合剤の量を適切に制御することによって,力学的に優位な特性を有する充填高分子材の創生が期待できる.提案した充填高分子材の力学特性評価モデルと最適化手法を援用して所要の特性を具備した充填高分子材創生について検討する.
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