研究課題/領域番号 |
15K05698
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆基 立命館大学, 理工学部, 教授 (40242581)
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研究分担者 |
坂根 政男 立命館大学, 理工学部, 教授 (20111130)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属疲労 / 多軸負荷 / 疲労損傷 / 寿命評価 / 解析ソフト |
研究実績の概要 |
航空機や高速鉄道車両、高温構造機器などの実機を構成する部材では、繰返し荷重の応力・ひずみの主軸が多方向に複雑に変動する多軸負荷(非比例多軸負荷)を受けることが多い。しかしこのような繰返し負荷に関して、その多軸応力・ひずみ状態や多軸負荷損傷を考慮した強度評価手法の開発はまだ発展途上にある。本研究では、研究代表者らの非比例多軸負荷におけるこれまでの一連の疲労強度研究の成果を基に、構造機器・部材の疲労に関する実設計・開発および維持管理の現場への応用を具体化するための多軸疲労強度評価手法を構築する。すなわち、蓄積された多軸疲労強度データおよび研究代表者らが提示している応力・ひずみの評価手法(IS法)および解析ツールを最大限活用し、複雑な非比例の繰返し変動負荷にも対応できる多軸疲労損傷評価モデルを開発することを目指している。 平成27年度では1. 研究調査およびデータ収集、2. 多軸疲労試験の実施および 3. 多軸疲労強度評価モデルの開発、を行った。すなわち、 1. 研究調査,データ収集:国内外でのこれまでの多軸疲労研究の再調査と研究代表者の多軸疲労研究における広い国内外研究ネットワークを利用して、変動負荷での多軸疲労強度データの入手と既存の損傷評価モデルの再検証を行い、モデルとツールの開発にフィードバックした。 2. 多軸疲労試験の実施:非比例多軸の変動負荷における疲労損傷に及ぼす材料依存性および負荷経路依存性を明らかにするために疲労試験を実施した。得られた試験結果および1で得た情報を総合的に評価分析して、非比例多軸の繰返し変動負荷で各種損傷パラメータを抽出し、それを反映してIS法の変動負荷への対応強化に繋げた。 3. 多軸疲労強度評価モデルの開発(損傷モデル):上述の1および2により非比例多軸の変動負荷にも対応したIS法に基づいた損傷モデルの開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に予定していた、モデルやツールの開発に必要な研究調査・データ収集はほぼ進められたが、次年度も継続する。多軸疲労試験においては、多軸疲労強度特性情報を得るための材料試験の準備はほぼ整ったが、薄肉円筒試験片に軸とねじりの組合せ負荷を独立且つ任意に与えた変動負荷の試験には高度な試験技術を必要とし、試験制御プログラムの作成および試験装置の整備に予想外の余分な労力を必要としたために、試験データの取得が当初計画よりも遅れている。なお、多軸疲労強度評価モデルの開発は、試験データ取得遅れの影響はほとんどなく、順調に開発が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
多軸疲労強度評価モデル・ツールの開発を継続する。解析モデルを基に開発するツールは、応力・ひずみの時刻歴のデータおよび実験から得られる寿命データ(非比例多軸負荷による損傷増加の材料依存性を示すパラメータが追加)を入力すると、計算部分はブラックボックスでも最終的に、応力・ひずみの状態(応力・ひずみの大きさと主軸方向の変化)、非比例度、応力・ひずみ範囲、同平均値、さらに予測寿命が出力される。すなわち、非比例多軸負荷での疲労に関する専門知識がない技術者でも機械的、且つ手軽に解析ツールを扱うことができる点において汎用性が高く、優位性がある解析ツールとなる見込みである。 本解析ツールは、平成24~26年度に実施した科研基盤研究Cの研究課題の一環として基礎的なものはほぼ完成しており、これに本研究で得られた損傷モデルを組み込んで改良型評価ツールを開発する。とくに損傷モデルを構築する上で、非比例多軸繰返し負荷でのサイクル計数法や累積損傷評価法(最大累積損傷面の決定方法を含む)が重要な因子となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の材料試験計画が当初予定よりも遅れたために実験消耗品等の使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた材料試験の実施に伴う実験消耗品費として使用する。
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