研究課題/領域番号 |
15K05701
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
清水 一郎 岡山理科大学, 工学部, 教授 (10263625)
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研究分担者 |
中川 惠友 岡山理科大学, 工学部, 教授 (90309542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 塑性変形 / 局所組織制御 / 集合組織 / 熱処理 / 長尺材 / 変形双晶 |
研究実績の概要 |
今年度は本研究の初年度として,最初にマグネシウム合金長尺材の選定とその初期集合組織調整を試みた.マグネシウム合金の中で比較的広く用いられているAZ31押出し丸棒材を複数入手し,長手方向および半径方向に一定量の圧縮塑性変形を与えた後,これまでの研究から得られた知見から373 K~573 Kの異なる温度で真空焼鈍を実施した.圧縮量と焼鈍温度をパラメータとして集合組織状態を整理することにより,集合組織強度を数段階に制御した素材を得る手順をほぼ確立することができた.加えて,後方散乱電子線回折法によって組織状態を調べた結果,焼鈍温度によって若干の差異はあるものの数十ミクロン程度の等軸粒であり,焼鈍によって結晶粒をそれほど粗大化させることなく,集合組織を制御できることが確かめられた.これらの結果は,本研究が目的とする局所的な組織制御に極めて有用であるとともに,実用材料の塑性異方性制御にも役立つと期待される.この成果の一部は既に学会にて発表を行った.なお,外径が数ミリメートル程度の円管材も既に入手し,同様の準備を進めている. 次に,長尺材に局所的な塑性変形(予変形)を与えるための試験装置および試験方法について検討を行った.その結果,現有の二軸圧縮試験装置に特殊形状の圧縮工具を組み合わせることによって,ミリメートルオーダーの領域に異なる複数様式の塑性変形を与えることができた.ただ現状では,最終断面形状を一様に揃えるには至っておらず,この点は継続的な検討によって解決を目指したい.現在,これらの基礎的検討結果をもとに,変形様式と熱処理を組合わせた試験を実施し,定量的な局所組織制御の基礎となるデータの蓄積を進めているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度掲げていた研究実施計画の主要点は,マグネシウム合金長尺材の試験材料選定とその初期集合組織を調整できる手法を確立すること,長尺材に対して局所的に二軸圧縮を与える試験装置と試験方法を準備すること,局所組織制御の基礎として変形履歴が組織状態等に及ぼす影響の定量的情報を蓄積すること,の3つである.1つめについては,先に述べたように圧縮塑性変形と真空焼鈍の組合せによって,平均結晶粒径が数十ミクロン程度で異なる集合組織を有する素材を得ることがすでに可能となっている.ただし,管材については検討を進めている段階である.2つめについては,長尺材に対して局所的に二軸圧縮塑性変形を与える試験装置と試験手段の準備ができており,異なる変形様式への対応も可能となっている.3つめについては,若干遅れてはいるものの,圧縮変形様式と熱処理条件を変化させた局所組織制御の基礎的実験を進めている. 以上のように,当初の研究実施計画に対して若干の遅れはあるものの,全体的にはほぼ順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
局所変形様式と熱処理条件をパラメータとした局所組織制御の基礎的検討を引き続き進め,変形履歴が組織状態に及ぼす影響の定量的データを得る.同時に,最終断面形状をほぼ一様に揃える方法についても検討を続ける.これらの研究に必要な装置類は全て整っており,研究遂行に支障はない. 以上の基礎的検討結果をもとに,マグネシウム合金長尺材における局所組織制御手順の完成と力学的特性評価を試みる.具体的には,局所塑性変形と熱処理を組み合わせて試作した局所組織制御長尺材に対して,組織制御領域および傾斜組織と予想されるその周囲を含む領域の力学的特性を,引張り試験,圧縮試験,曲げ試験などの各種材料試験法によって調べる.このような限定された領域の力学的特性評価法について,評価対象外領域に強化材等を接合して評価対象領域を制限する方法を提案しており,実際に評価を試みた経験も有している. 続いて,局所組織制御手法の総合的検討を実施する.マグネシウム合金長尺材としての実用性を考慮すると,力学的強度特性を制御するのみならず,最終的な延性の確保も重要な課題である.そこで,局所的な組織状態を保持しつつ,延性付与が可能な熱処理条件についても検討する.これらの検討を行った成果として,設定条件である初期集合組織,塑性変形履歴,熱処理条件と,結果である結晶学的組織状態(変形双晶,集合組織,結晶粒径など)と力学的性質(引張り・圧縮性質,曲げ特性など)の相関を総合的に解明する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
「設備備品費」,「旅費」についてはほぼ当初の計画通りであり,次年度使用額はほぼ全て消耗品費である.購入を計画していた電子顕微鏡用消耗品(フィラメントなど)が今年度は予想外に不要であったこと,試験機への組込みを計画していたロードセルとアクチュエータコントローラについて,納期と実験時期の関係から,とり急ぎ他の装置に用いていたものを流用したことが主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
電子顕微鏡用消耗品は,消耗の程度によるが近いうちに必要と予想している.また,ロードセルとアクチュエータコントローラは購入予定である.その他,追加試験材料,試験機用消耗部品,画像解析用ソフトウェア,研磨用消耗品類,腐食用薬品などを,研究を計画通り遂行するため,当初の予定にしたがって購入する計画である.
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