研究課題/領域番号 |
15K05704
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
岡根 正樹 富山高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (90262500)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摩擦攪拌 / 摩擦撹拌接合 / 異種金属接合体 / 疲労強度 / 疲労破壊 |
研究実績の概要 |
本研究では,摩擦攪拌接合(FSW)による異種金属接合体の疲労破壊過程の解明と,それに基づいた接合体の強度向上を目的としている.今年度は,疲労試験中に接合部近傍を連続的に観察する装置の試作を予定していたが,それに先立ち,観察対象となるFSWによるAl-Mg-Si系合金と低炭素鋼の接合体作製を試みた.本研究では,対象となる強度試験を引張試験のみではなく,疲労試験に拡張しており,それにあわせ接合体の形状寸法を設計変更した.その結果,従来の接合条件では,安定した接合体が得られないことが判明した.そこで,これまでの知見をもとに,試行錯誤的かつ系統的に接合条件を変化させて大ざっぱな接合可能条件範囲を求め,接合可能条件範囲内で,接合速度条件のみを系統的に変化させた複数の接合体を作製し,組織観察や各種の強度試験を実施した. その結果,Al合金側には,0.05mm~1mm程度のFeを主成分とした小片が散在しており,それらの量が,一つの接合体内で分布していることがわかった.これらの小片は,接合加工時に接合ツールが鋼側の新生面を露出させ,Al合金との反応を促進させる際に発生したものである.次に,得られた接合体から機械加工した試験片を用いた引張試験,ならびに,応力レベルを一定とした簡易疲労試験を実施し,接合箇所(小片の量)と強度の関係を調査した.その結果,接合体の破壊に対しては,小片は強度を下げる要因となる応力集中源にはならないことがわかった.また,巨視的には破面が接合界面での破壊であっても,微視的にはき裂発生起点が界面ではなくAl合金側にシフトしている等の知見を得た. なお,疲労試験中の接合部近傍を連続的に観察する装置は,上記のように接合体の作製と基本的な特性の把握に予想以上の時間を要したため,年度内に試作を完了することができなかったが,平成28年度前半の完成を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,摩擦攪拌による異種金属接合体の疲労破壊過程の解明を目指しており,疲労試験中に接合部近傍をリアルタイムで観察する装置の試作を予定している.当初は,平成27年度中の試作完了を目指していたが,研究実績の欄に記載したように,疲労試験片を作製するための第一段階となる,Al-Mg-Si系合金と低炭素鋼からなる異種金属接合体の作製ならびに基本的な特性把握に,予想以上の時間を要したため,疲労試験中に接合部近傍を観察する装置の試作が年度内に完了しなかった.装置の基本構想には変更はなく,平成28年度前半の完了を目指して試作を継続中であるが,このような理由から,当初の予定よりも,やや遅れていると判断するものである.
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今後の研究の推進方策 |
これまで述べたように,本研究の前半となる平成27年度から平成28年度前半にかけては,摩擦攪拌による異種金属接合条件の確立,基本的な疲労試験の実施ならびに,疲労試験中における接合部近傍の観察装置の試作が主要な内容となる.このうち,観察装置の試作が前述のとおりやや遅れていることから,まずは,これの試作完了を最優先課題とし,これと平行して,安定した接合体を得るための接合加工実験を随時実施する.また,作製した接合体から機械加工した試験片を用いた疲労試験を実施し,基本的な疲労特性の把握を目指す.次に,当初の予定通り,これらの実験的手法に解析的な検討を加え接合部における疲労破壊過程のシミュレーションを目指す.解析的な手法には,粒子法を用いる予定である.粒子法は,メッシュレス法であるため,メッシュ破綻が生じず,大変形の解析や,き裂の進展シミュレーションに適した方法であるが,開発の歴史が浅く,解析ソフトも限定的であるため,解析的な手法による検討の際は,信頼性の高い有限要素解析も併用する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,平成27年度に予定していた,異種金属接合体の疲労試験中に,接合部近傍を観察する装置の試作が,研究の進捗状況に起因する理由で遅れており,その関係で,その試作に必要な物品を購入することができなかったため,予算に残額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,これまでの実験的な手法による異種金属接合材の疲労破壊過程の観察に加え,解析的な手法による疲労破壊過程のシミュレーションを予定している.この検討を進めるためには,試作が遅れている疲労試験中に接合部近傍を観察する装置が必要不可欠であることから,平成28年度前半には試作を終える予定であり,その過程で使用する予定である.
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