本研究では,摩擦攪拌接合(FSW)による異種金属接合体の創製と基本的な疲労強度特性の把握ならびに破壊過程の解明,さらに,それに基づいた接合体の強度向上を目的としている.昨年度までは,A6063合金(展伸材)と炭素鋼S45Cを,摩擦攪拌により突き合わせ接合した接合材を供試材として疲労試験を実施し,基本的な疲労強度特性に加え,疲労破壊のメカニズムについて検討した.また,接合による攪拌部(SZ)に欠陥がある供試材に,時効処理を施したところ,疲労強度が25%程度向上すること等を明らかにした. 今年度は,これに引き続き,SZ内に顕著な欠陥が生じていない接合体についても,時効処理を施して疲労試験を実施した.その結果,欠陥のない場合でも時効処理により疲労強度が25%程度向上することがわかった.本接合材は,A6063内の接合部近傍が,摩擦攪拌作用により軟化する特徴があり,時効処理により,SZ部の硬度は回復するものの,熱加工影響部(TMAZ)と思われる領域では,局所的に,硬度が回復しない領域が残留する.疲労破壊は,高応力レベルにおいて,この硬度が回復しない領域で発生し,中~低応力レベルでは接合界面近傍で発生していた.つまり,負荷応力による破壊形態の遷移がみられた. 一方,これと平行して,ダイカスト用Al合金ADC12とA45C接合体を作製し,機械的性質を検討した.その結果,ADC12内の接合領域は,A6063の場合と異なり軟化しておらず,ほぼ,母材部と同程度の硬度を維持していることがわかった.また,本接合体を用いた疲労試験を実施し,基本的な疲労強度特性を把握するとともに,疲労破壊形態について検討した.その結果,ADC12内には軟化領域が存在しないため,A6063の場合には問題にならない程度の僅かな欠陥であっても,それらが疲労破壊の起点となることがわかった.
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