研究課題/領域番号 |
15K05708
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
佐山 利彦 富山県工業技術センター, その他部局等, その他 (40416128)
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研究分担者 |
森 孝男 富山県立大学, 工学部, 教授 (30275078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 信頼性設計 / エレクトロニクス実装 / マイクロ接合部 / X線マイクロCT / 放射光 / ヘルスモニタリング / 熱疲労 / 寿命 |
研究実績の概要 |
エレクトロニクス実装基板(以下、基板)において、信頼性に最も大きな影響を与える因子である接合部を対象とし、放射光X線CT技術を適用した疲労き裂等の非破壊モニタリングに基づき、疲労破壊に対する健全性診断、余寿命評価技術、さらに基板の保守技術を統合化した新しい概念のヘルスマネジメント技術を開発している。この技術の実現のため、放射光X線CTを応用した二つの要素技術の実用化を進めた。すなわち、(1) 放射光X線ラミノグラフィを適用したき裂観察技術、および(2) DIC(デジタル画像相関法)による3Dひずみ分布の可視化技術である。 1. 研究内容・成果 (1) パワーモジュールの典型的な接合構造であるダイアタッチ接合部(厚さ約40 μmのはんだ層によってセラミックダイを基板に接合した構造)やチップ部品のはんだ接合部を対象とし、放射光X線ラミノグラフィ技術を用いた疲労き裂の不定期モニタリングを行った。その結果、疲労き裂(開口量0.1 μmオーダー)を3次元的に可視化することに成功し、その進展過程を定量化することで、非破壊での余寿命評価が実用可能なものとなった。(2) 放射光X線ラミノグラフィによって得られた断層画像にDICを適用して、接合部の3Dひずみ分布の計測を試みた。Ag3Sn相等の特徴量が多い部分ではひずみ計測の目途をつけることができた。 2. 有用性・意義 エレクトロニクス関連業界においては、機器の信頼性向上を目指し、基板の健全性を診断しようというヘルスモニタリングへの期待が高まっている。本研究で開発を目指している技術は、接合部における欠陥(き裂等)や損傷状況(ひずみ等)を3次元的、時系列的に捉えることができる高分解能を有する非破壊検査手法に基づいており、電子機器産業界のニーズにタイムリーに応えることができる。将来、関連企業製品の高度化、信頼性向上に大きく貢献することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光X線ラミノグラフィ技術の開発を前倒しで実施し、基板を用いたき裂やボイドの表面積の計測結果に基づいて疲労寿命の推定が可能となっており、パワーモジュール等の接合部における実用的な信頼性評価が十分に可能なレベルに至った。一方、DICによるひずみ分布の可視化については、特徴量が多い部分的な領域に留まっている。3Dひずみ分布可視化アルゴリズムの完成度が十分ではなく、予定よりもやや遅れが出ている。研究全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 放射光CT技術を適用した放射光X線ラミノグラフィによる疲労き裂等の非破壊モニタリングを、自己発熱するデバイスを実装した実際の基板に適用する実験を行い、その完成度を高める。(2) DICによる、ひずみ分布の可視化技術を強力に推進するため、実績のある研究者を分担研究者として加える。これまでの実験で、良好な画像データが得られているので、このデータを用いてひずみ分布の可視化アルゴリズムを完成させる。(3) 放射光X線ラミノグラフィを適用して不定期モニタリングで得られるひずみ3D分布データ、および疲労き裂の3D進展データに基づく余寿命推定技術の高精度化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、計算機等の画像処理システムの増強を当初の予定よりもやや低い金額で行うことができたため、若干の研究費を繰越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、放射光X線ラミノグラフィおよびDICによるひずみ可視化技術の開発のための追加実験を行うので、大型放射光施設SPring-8での実験費用、旅費、試験体の製作、および実験資材の調達に、研究費を集中的に使用する。他に、国内外の学会、会議において研究成果発表を行うため、参加費や旅費に使用する。
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