近年,アスペクト比の高い深穴や深溝,細管が製造されており,その表面粗さを測定する技術が必要とされている.しかし,従来の表面粗さ計を用いて細管内の粗さを測定する場合は,細管の端部数mmの領域のみを測定するか,あるいは細管を軸方向に切断し測定するしかなかった.そこで,著者らは,従来の粗さ計で用いられている差動トランスの代わりに先端加工ファイバと円柱状反射鏡を用いて粗さを検出する方法を提案したが,測定範囲が8ミクロンと狭く,初期位置の調整が困難であった.そこでエンコーダ状反射鏡を用いた方法を提案したが,まだ測定範囲が狭かった.そこで本研究では,ピエゾによる零位法を用いて測定範囲を拡大することを試みた。 従来の測定装置ではまずキャリッジにバネを介してスタイラスが取り付けられている.キャリッジの下部には二つのスキッドがある。スタイラス上部には円柱状反射鏡,あるいはエンコーダ状反射鏡が固定されている。キャリッジの上部には先端加工ファイバが設置されている.レーザ・ダイオードからの光はオプティカル・カプラ,先端加工ファイバを通り,その焦点距離上にある反射鏡へと照射される.反射鏡で反射された光は先端加工ファイバに戻り,フォトダイオードへと向かいそこで電気信号に変換される。スタイラスが細管内を走査した際,表面粗さに依存して反射鏡が上下に動くことで反射光の光量に変化が生じ,表面粗さを測定することができる.今回提案する細管内粗さ計のキャリッジ,スタイラス等は先に提案したものと同じである。大きく異なるのは,先端加工ファイバをバイモルフ型ピエゾに取り付けこれをキャリッジに固定することである. ピエゾによる零位法を用いて細管内粗さ測定器の検出範囲の拡大を試みた.実験結果より,表面粗さの検出範囲が約24ミクロンであることが分かった.
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