本研究は,順・逆電圧印加を併用した固体イオン交換法によって,ガラス中の任意の箇所に所望の形状を有した金属層(本研究では主に銀)を形成すること,およびその金属層をガラス内部配線として利用することを目的としており,平成29年度は主として以下の3点に関する研究開発を実施した. 1) 前年度までに明らかとなった知見に基づき,上部電極形状を変更することによって,銀析出の起点制御を可能とした.これにより,特定箇所のみでガラス表面と接続し,残りの部分が全てガラス内部に埋設された配線の形成が可能となった.また,このガラス表面との電気的接続箇所が内部配線の取り出し電極として活用できることを明らかにした. 2) 銀およびナトリウムを交互に添加することによって,ガラス内部にそれぞれのイオンがリッチな領域からなる多層構造を形成した.またこのガラスに対して逆電圧印加を行うことによって,立体的に交差した2層の銀析出層を形成することが可能となった. 3) 上下電極の配置を変更することによって,銀添加・析出領域の形状制御を試みた結果,場所によって深さの異なる添加・析出層を形成することが可能となった. 研究期間全体を通じた成果としては,析出物の形成メカニズムを明らかにした点,析出物をガラス内部微細配線に利用するための添加金属の供給方法や最小配線ピッチを明らかにした点,さらに多層配線を可能とした点が挙げられる.今後はこれらの知見を活かして,ガラス内部にさらに複雑かつ自在な配線を可能とすべく研究を進める計画である.
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