塑性加工の数値シミュレーション技術は、いまでは新しい加工法の開発、生産現場の技術改善等あらゆる場面で不可欠な道具となっている。この数値シミュレーションの解析精度を上げるために、解析に必要な被加工材の構成式に関しては精力的な研究が積み重ね、精緻な域に達しつつある。一方で、解析に必要なもう一つの関係式である被加工材と金型間の摩擦法則に関しては、面圧の低い領域ではクーロンの法則、面圧の高い領域では摩擦せん断応力一定則が一般的に使われており、それぞれの法則の適用可能な面圧範囲が不明確である。このことは、圧延、鍛造加工のような接触界面の面圧が大きく変動する加工法の数値解析にとって大きな障害となっている。 研究代表者が提案した摩擦法則ではクーロン則の適用可能限界面圧が理論式で提示されており、低面圧域における摩擦係数を計測しておけば、高面圧域での摩擦が予測可能である。摩擦法則の形もシンプルで数値シミュレーション解析コードへの導入も簡便である。 平成27年度はこの新しい摩擦法則を鍛造加工CAEソフトDEFORMのユーザーサブルーチンに組み込み、据込み、後方押出しの解析を行い、当該サブルーチンが正常に機能することを確認した。 平成28年度は27年度に完成した新摩擦法則のサブルーチンを用いて円板圧縮のCAE解析を行い、解析結果の実証実験を行った。また、冷間鍛造用潤滑皮膜の摩擦法則を実験的に確立した。さらに、液体潤滑剤を用いた場合の摩擦挙動の予備実験を行った。 平成29年度は液体潤滑剤を用いた場合の摩擦挙動を広範囲の実験条件で計測し、摩擦法則の基本形を確立した。
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