研究課題/領域番号 |
15K05718
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
吉田 健吾 静岡大学, 工学部, 准教授 (70436236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 成形性 |
研究実績の概要 |
マグネシウム合金板AZ31(板厚1mm)に単軸引張,平面ひずみ引張,等2軸引張の3種類の変形を破断するまで負荷した.破断後に至るまでの変形は,デジタル画像相関法によって計測した.破断直前に板厚くびれが発生することなく,突如,破断した.マグネシウム合金は,このような破断形態をとることが知られている.そして,そのメカニズムに関する研究が,近年活発に行われており,圧縮双晶および二重双晶の発生に起因したボイドが破断の起点となることを示唆する結果が,単軸引張後の試験片観察から得られている.本研究では,それが平面ひずみや等2軸引張の状態の低延性の直接的な原因であるか否かの検証を行っている.本年度は,X線回折による結晶方位測定を行った.X線回折の結果より,負荷前の供試材と破断後の供試材の集合組織を比較したところ,単軸引張後の試験片では,引張双晶による方位回転ならびにすべり変形による方位回転が確認された.一方,平面ひずみ引張,等二軸引張においては,破断後の集合組織を測定しても初期状態と有意な差はなかった.これより2つのことが結論付けられる.この結果をもたらした第一の要因は,これらのひずみ状態では破断ひずみが約5%であり,変形が小さいために集合組織が大きく変化しないことである.そして第二に,この結果は,破断発生時に材料全体において圧縮双晶や二重双晶が発生していないことを示している.したがって,二軸変形においても圧縮双晶が破断の起点であると仮定しても,それは局所的に発生しており,巨視的に観察される現象ではない可能性が高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破断の原因として,双晶変形が起因することが示唆されているが,本年度の実験より,材料全体において双晶が発生していないことが明らかとなった.今後は,EBSDを活用した微視的な測定を行い,破断の直接的要因を検討する.
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今後の研究の推進方策 |
EBSDによる破断部近傍の結晶方位の測定を行い,破断の要因を検討する.その後,すべりと双晶を考慮した結晶塑性モデルを用いた有限要素法による結果と比較検討し,破断の要因を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
試料研磨用の消耗品に要する支出が予想より少額であったためであり,研究の進行は順調である.
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次年度使用額の使用計画 |
実験とモデリングとの比較のため,大規模な有限要素法解析を実施する予定である.今後,そのための計算機の性能向上に予算を支出する予定である.
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