研究課題/領域番号 |
15K05720
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
前野 智美 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80505397)
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研究分担者 |
森 謙一郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80127167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 焼付き防止 / 再潤滑 / 油溜り / スライドモーション |
研究実績の概要 |
有限要素シミュレーションを行い,成形時の金型弾性変形について調べた.除荷による工具の弾性回復によってスプライン溝の隙間が拡大することが予測された.また,パンチ側溝部に素材が完全充満しないため,再潤滑のための隙間が確保できることが予測された.焼付きの生じやすいスプライン成形に低サイクル振動鍛造が有効であることが示された.一方で,円筒押出しのように完全充満しやすい成形においては,あまり隙間が生じないため,自動再潤滑する難しさが予測された. 振動ありとなしでスプラインの後方押出し成形を行い,焼付き防止効果について比較した.スライド停止保持ありの振動モーションは,パンチ下部に生じる負圧が一定時間保持されるため,十分な再潤滑が行われ,焼付きの生じないスプライン成形が達成できた. 潤滑剤粘度が再潤滑に及ぼす影響について調べた結果,低粘度の潤滑剤においては振動モーションの停止保持時間を短縮でき,振動モーションで成形した製品に生じる油溜りの深さおよび大きさが低減され,高品質な表面性状が得られることが明らかになった.一方で,潤滑剤としての焼付き防止性能が低下するため,振動回数の増加を招くこともわかった.申請時に計画していた,低サイクル振動鍛造に適した潤滑剤を開発にあたり,意義ある結果が得られた. 成形荷重の変化によって,金型およびプレス機の弾性変形が変化するため一定のパンチ引き戻し量でスライドを制御すると成形の前半で潤滑が過剰となり,後半で不足することがわかった.成形の前半と後半でパンチ引戻し量を調整することによって製品に生じる油溜りの深さおよび大きさを低減することができた. スライド停止保持なしでも自動再潤滑がえられるようにパンチ先端に潤滑剤ポケットを持つ工具を用いて振動鍛造を行った.停止保持なしにおいても焼付を防止できたがパンチ強度の低下による破損が生じた.さらなる調査が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に計画していた内容について完了しており,十分な結果を得た.また,平成28年度以降に計画している研究において重要な知見がえられた.平成28年度に計画している研究の一部についても進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の結果を踏まえ,低サイクル振動鍛造の機能に適した潤滑剤として低粘度油に固体潤滑剤を添加し,低粘度油にキャリア機能,固体潤滑剤に焼付き防止機能を持たせた潤滑剤の開発を行う.また,最適な振動モーションとして焼付き防止において最も少ない振動で成形するためのモーション設計方法について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関途中において所属機関が変更となったため,研究環境の調整が必要となった.研究は研究分担者である豊橋技術科学大学 森謙一郎教授の下で遂行し,研究に遅れは生じていない.
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次年度使用額の使用計画 |
現所属において研究を遂行するために,H28年度6月納入予定でプレス機を準備する.繰越しの助成金については,他の研究との使用時間に基づいて割り当てたプレス機購入の一部として使用する.
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