研究課題/領域番号 |
15K05725
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40304331)
|
研究分担者 |
岡田 晃 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60263612)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アルミニウム / 銅 / レーザ溶接 / パルスレーザ / 微細溶接 / 溶け込み深さ / 重畳 / 吸収率 |
研究実績の概要 |
レーザ加工において溶接困難材料とされているアルミニウムに対し,波長808nmの連続発振半導体レーザをパルスNd:YAGレーザに重畳することで溶接ビードの高品位化と大きな溶け込み深さを両立する手法を検討した.溶接ビードの断面観察により溶融領域を計測するとともに,熱電対による周囲温度の計測,ならびに高速度ビデオカメラによるレーザ光照射部の観察を行った.また,アルミニウムの固体状態における波長808nmの連続発振半導体レーザの光吸収率を熱伝導による温度上昇を計測することで算出した.そして,これらの測定結果を取り入れた非定常熱伝導解析により溶接プロセスにおける温度分布を検討した.波長808nmの連続発振半導体レーザ出力はパルスNd:YAGレーザのピーク出力に対して数パーセントと,それ自体でアルミニウムを溶融するだけの効果は無いが,連続発振半導体レーザを重畳することでパルスNd:YAGレーザの休止時間における試料温度を高く維持できていた.それにより,熱伝導型とキーホール型の溶接プロセスの遷移領域においてもパルスNd:YAGレーザのエネルギーをアルミニウムに対して安定的に吸収させることが可能であった.またこの時,キーホールを形成できることから大きな溶け込み深さを得ることができ,かつ激しいスパッタの飛散を抑制した状態でプロセスを構築できることから良好な表面品位を得ることができた.さらに,その溶接プロセスの遷移領域において,安定的にキーホールを形成できるためのプロセスウィンドは連続発振半導体レーザの出力を適正化することで広くすることが可能であった.その結果,アルミニウムの微細レーザ溶接においてもパルス幅数msのパルスレーザを用いても溶接ビードの高品位化と大きな溶け込み深さを両立できることが明かとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画であげていた「波長808nmの半導体レーザ重畳によるエネルギー吸収効率向上のメカニズムの検討」,および「熱伝導型溶接とキーホール型溶接の遷移領域におけるプロセスの安定化」を実施した.その結果,それ自体でアルミニウムを溶融するだけの効果は有しない連続発振半導体レーザの重畳が,パルスNd:YAGレーザによるアルミニウムの微細溶接プロセスに及ぼす効果に関する知見が得られた.また,熱伝導型とキーホール型の溶接プロセスの遷移領域という特異的な状態においてもプロセスを安定化させるための方向性が示唆されるなど,おおむね順調に進展したと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては,おおむね順調に研究計画を遂行できたことから,平成28年度は当初の計画通り,銅の高効率,高信頼微細パルスレーザ溶接法の検討を実施する予定である.具体的には,「ミリ秒パルスグリーンレーザの開発」を試み,それを用いてレーザ加工における難加工材である銅に対してレーザ光照射実験を行って「ミリ秒パルスグリーンレーザによる基礎特性の検討」を行う.これにより,平成29年度に実施予定の「吸収光エネルギー量の明確化」と「パルス波形制御による高機能化」のための準備と知見を得る.
|