本研究では、パルス放電を利用して、絶縁材料を工作物へ移動させ付着させることを目指した。 導電性の材料を電極として製作し、工作物へ移動させる技術は、既に研究代表者らが開発しているが、絶縁材料には放電を発生させることができない。そこで、絶縁材料からなる電極に放電を発生させるために、低沸点材料であるZn(亜鉛)をバインダ―兼搬送媒体とした。Znを使用した理由は、放電の熱により、低沸点材料であるZnが蒸発し、絶縁材料のみが付着することを狙ったためである。ところが、絶縁材料を工作物に移動させることはできたが、付着物中に大量のZnも残っていた。付着物中のZnの割合を減らすために、様々な方法を試みたが、最終的には、電極の成分として混入するZnを微細化し、均等に分散させるために、遊星ボールミルを使用することが有効であることがわかった。これまで、重量比でZn:絶縁材料=8:2程度のZnを混合する必要があったが、新しい方法では、3:7程度でも良好な導電性を得られることがわかった。また、Znが微細化され、全体に均一に分散できるようになった。 試作した電極を用いて、放電による電極材料の付着試験を実施した。Znが微細化されているため、小さなエネルギーの放電パルスでも、電極材料を溶融させ、工作物表面に付着させることができた。工作物への付着物中のZnの割合は、約1%程度と大幅に低減することができた。これは、Znを微細化することで、放電の熱により、これまでよりも容易に蒸発するようになったためであると考えている。絶縁材料の密着強度については、具体的な測定は実施できていないが、電子顕微鏡を用いた観察では、絶縁材料と工作物材料が溶融しているように見え、強く結合していると予想している。 以上のように、パルス放電を用いて、絶縁性の材料を工作物表面に付着させる技術の基本的な部分を確立することができた。
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