研究課題/領域番号 |
15K05735
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
古谷 克司 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00238685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 積層造形 / 放電加工 / 微細加工 / 粉末 / 堆積加工 / 静電気 / 焼結 / 溶融 |
研究実績の概要 |
付加製造技術による三次元形状創成法は技術者以外にも興味をもたれるようになり,国内でも注目を集めている.金属粉末を層状に堆積・固化させる方法では,熱源であるレーザ光源や電子ビーム源が高額であるため装置価格が高く,普及を阻んでいる.そこで,本研究では,大気中において近接させた電極対と粉末層間で発生する放電により粉末を選択的に固化させて層形成を繰り返すことで,3次元形状を創成する積層造形法を開発することを目的としている. マイクロメータ付XYZステージを用いて,XY方向に放電位置を走査するとともにZ軸方向の極間距離を調整した.Z軸方向の粉体層厚さの制御には,ステッピングモータ駆動のステージを用いた.放電回路にはコンデンサ回路を用いた. 加工原理の確認では,電極消耗による長さのばらつきの補償は手動で行い,直径0.5mmの銅電極2本を中心間隔0.8mmで配置し,一体として上下動させた.1層あたりの厚さは鉄粉の平均粒径と同じ0.2mmとした.粉末が帯電するため,電圧を印加してから放電するまでの間に静電気力により飛散することがあった.また,放電エネルギーが大きすぎると,放電により溶融した粉末が飛散する現象も観察された.印加電圧またはコンデンサ容量を変化することで放電エネルギーを変化させることができる.しかし,電圧を高くすると静電界による放電前の粉末飛散量が増加するため,コンデンサ容量を調整することにした.コンデンサ放電回路は,ピーク電流が大きく,パルス幅が短い.そのため粉末を完全に溶融することが困難で,かつ,溶融した部位は飛散した.最終的には,長さ6mm程度の一直線形状と,5×6mm程度のオーバハング部を含む十字形状が堆積できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は,提案する積層造形手法が実現可能であることを示すことを目的として研究を進めた.その初期段階で,堆積形状の観察や寸法測定を行うビデオマイクロスコープに不具合が発生した.研究計画では電極の自動装置を試作して実験することにしていたが,2016年度に更新するために自動送り装置の試作を後回しにして,手動で送ることにした.実験の効率は若干下がったが,時間をかけることにより,当初目標であった実現可能性を示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
コンデンサ放電回路では電気条件の調整が困難であったため,トランジスタ放電回路もしくはトランジスタ制御コンデンサ放電回路に変更する予定である.ギャップ長が変動して放電が不安定になるようであれば,高電圧を重畳する.電極消耗を定量的に評価し,それを補償する方法を検討する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
積層造形した結果の形状観察および寸法測定に使用しているビデオマイクロスコープの調子が悪いため,更新を予定している.当初計画では想定していなかったため,前倒し請求して2015年度に購入することも検討したが,2015年度の支出を抑え,2016年度交付分と合わせて購入することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
上でも述べたように,ビデオマイクロスコープを更新する予定である.要求仕様を満たす最低セットで今年度配分額を合算した額の9割以下となるよう留意して進める予定である.
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