研究課題/領域番号 |
15K05736
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村田 順二 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70531474)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | スライシング / エッチング / 光照射援用加工 / 光ファイバ |
研究実績の概要 |
本研究では、太陽電池や半導体で使用されるシリコン(Si)や他の機能性電子材料に対し、その基板(ウェハ)製造工程における新たな切断加工法を開発している。機械的な作用ではなく科学的作用を主体として新しい切断加工(スライシング)技術を開発し、低カーフロス(切断代)および薄型ウェハを実現することを目的としている。 前年度までにおいて、光ファイバ/電極アレイを利用した光照射援用加工により加工速度の向上が可能であることを見出している。この研究成果を踏まえ、平成28年度においては加工特性の向上を図るべく、研究開発を実施した。具体的な研究内容は以下の通りである。 ① 光ファイバ/電極アレイの作製方法の検討:光ファイバ/電極アレイは、細線の光ファイバと金属ワイヤを規則的に配列し一体形成したものである。平成27年度までにおいては、光ファイバと電極ワイヤをラミネートフィルムによって一体化させる手法をとっていたが、この方法では、規則的な配列に困難が生じていた。そこで、新たな作製方法として、紫外線硬化樹脂を利用する方法を考案した。この方法は、配列された光ファイバと電極ワイヤに対し、液状のUV硬化樹脂を滴下し、その後UV光照射によって硬化させ一体化させる。その後、これを研磨によって薄化することで作製される。これによって、従来の方法よりも規則的な配列が可能となり、またアレイの薄型化も可能となった。 ② 加工装置の改良:上記で作製した光ファイバ/電極アレイを用いて加工を行うが、加工特性の向上には、アレイの加工物に対する平行度のアライメントや、アレイと加工物の相対運動が必要となる。そこで、平成27年度までに開発した加工装置に対して回転ステージや直動ステージ、モータ駆動直線ステージなどを設置することで、これらを可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光ファイバ/電極アレイを用いた光照射援用スライシング法によって、ダメージフリーかつ高能率な加工の可能性が見出されつつある。また、本方法は微粒子や有毒な薬品も使用しないことが確認されているため、環境負荷の低減や加工コストの抑制にもつながると考えられる。また、完全に非接触な加工であるため、加工物へのコンタミネーション(汚染)もきわめて少ないといえる。一方で、基板の切断までには至っていないため、加工後表面品質の評価は十分でないため、今後の研究において取組む必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、まず基板の切出しを行いその切断面の表面形状・粗さ、結晶ダメージ(加工変質層の有無)、金属汚染の評価に取組む。そのためには、加工速度の向上が必要不可欠であるため、紫外線強度および印加電圧が加工速度に及ぼす影響を調査するほか、薬液組成やその濃度・温度の影響を調べることにより、加工速度への主因子を抽出する。 また、光ファイバ/電極アレイのマルチ化にも取り組む。現在では一つのアレイを用いた加工実験にとどまっているが、少なくとも2つ以上のアレイにより同時に複数の加工溝を得ることを目的とする。それに伴い、加工装置の改良も実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部、薬品類が当初計画と異なる安価なものを使用したため、わずかながら未使用額は発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
金属ワイヤ等の消耗品の購入に充てる。
|