本研究では、太陽電池や半導体で使用されるシリコン(Si)や他の機能性電子材料に対し、その基板(ウェハ)製造工程における新た な切断加工法を開発している。機械的な作用ではなく化学的作用を主体として新しい切断加工(スライシング)技術を開発し、低カーフロス(切断代)および薄型ウェハを実現することを目的としている。平成29年度においては、具体的な研究内容は以下の通りである。 ① 加工液の液性と加工速度の関係を調べた。加工液が中性である場合には、加工はほとんど進展しなかった。それに対し、加工液が酸性(pH=1.0)および塩基性(pH=13.0)である場合にはおよそ2 μmの加工深さが得られることが明らかとなった。これは、加工液中において生成する酸化膜の溶解性と相関があると考えられる。本研究では作業性や加工装置の腐食等を考慮して塩基性の加工液を使用することとした。② 開発技術によるカーフロスの評価を行った。前年度に紫外線硬化樹脂を利用した新たな方法で作製を行った光ファイバ/電極アレイを用いた加工実験を行った。コア径50 μmの光ファイバと直径80 μmの電極ワイヤを一体化したアレイによって加工を行った結果、半値幅が約70 μmの加工溝を加工することが可能となった。これらの成果によって、従来の機械加工によるカーフロスを下回るものであり、かつ非接触で加工が可能であることから、装置の振動の影響を受けにくく、かつ加工面にダメージを全く発生させずに加工ができることを示した。
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