研究課題/領域番号 |
15K05738
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
仙波 卓弥 福岡工業大学, 工学部, 教授 (30154678)
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研究分担者 |
天本 祥文 福岡工業大学, 工学部, 助教 (00505670)
藤山 博一 福岡工業大学, 工学部, 教授 (50148912)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノマイクロ機械加工 / ナノ多結晶ダイヤモンド / レーザ加工 / 反応性イオンエッチング / 乾式ラッピング |
研究実績の概要 |
平成27年度には,焼結助剤として用いられているコバルトCoを炭化ホウ素B4Cや窒化硼素で置換した焼結ダイヤモンド(PCD)製円板をツルーアに使用し,レーザ成形を行い刃先の丸み半径を150 nm前後の値に成形したNPD製ノーズRバイトに対して乾式ラッピングを行った.その結果,PCD製ツルーアの成形や乾式ラッピングに使用したDCサーボモータ主軸のアキシャル方向に300 nm程度の非同期振れが生じていたことが原因で,刃先の丸み半径を1 nm以下に成形することはできたが,刃先にサイズが500 nm前後の欠けが発生した.
刃先に欠けのない乾式ラッピング技術を開発するためには装置の設計をし直す必要があり,平成27年度内に乾式ラッピング技術を完成させることには無理があると判断された.そこで,乾式ラッピング後のNPD製ノーズRバイトに対して実施する予定であった反応性イオンエッチングを一時断念し,本来は平成28年度に実施することを計画していた,レーザ成形を行い刃先の丸み半径を150 nm前後の値に成形したNPD製ノーズRバイトに対し,反応性イオンエッチングを前倒しして行った.
イオンエッチング条件の他に,NPD製ノーズRバイトを固定化するために使用したステンレス製ホルダの直径や形状,ホルダからのNPD製ノーズRバイトの突出し長さ等を変えてイオンエッチングを行い,イオンエッチングの刃先にホルダからスパッタアウトしたFeが付着しない条件を見出すための基礎実験を行った.また,質量数が異なる7種類の希ガスを用いてドライエッチングを行った.その結果,酸素プラズマを用いて反応性イオンエッチングを行うと刃先の丸み半径を1 nm以下に成形できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPD製ノーズRバイトを乾式ラッピングするためのツルーアには,焼結助剤として用いられているCoをB4CやBNで置換した焼結ダイヤモンド(PCD)製の円板を使用した.このPCD製円板の粗さを30 nm Rz以下に成形する過程で,PCD製円板を回転運動させるために使用したDCサーボモータの主軸に過負荷がかかってしまい,PCD製円板の表面に300 nm程度の非同期な面振れが生じてしまった.また,面振れが原因でNPD製ノーズRバイトの刃先にサイズが500 nm程度の欠けが生じてしまった.
そこで,乾式ラッピング後のNPD製ノーズRバイトに対して実施する予定であった反応性イオンエッチングを一時中断し,本来は平成28年度に実施することを計画していた,レーザ成形を行い刃先の丸み半径を150 nm前後の値に成形したNPD製ノーズRバイトに対して反応性イオンエッチングを前倒しして行った.その結果,レーザ加工を行い刃先の丸み半径を120 nm,楔角を80度に成形したNPD製ノーズRバイトに対して酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングを行うと,刃先の丸み半径を1 nm以下,楔角を83度に成形できることが明らかになった.
以上紹介したように,熱化学反応を利用した乾式ラッピング技術に関しては,刃先に欠けが生じるといった研究計画立案時に予期しなかった問題が発生し,平成27年後に技術開発を完成させることができなかった.一方,ドライエッチング技術に関しては刃先の丸み半径を1 nm以下,場所によっては0.1 nmに成形できるドライエッチング条件を見出すことに成功しており,本研究を3年の研究期間内で完成させる技術的裏付けとなる実験の結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年4月に作成した「平成27年度科学研究費助成事業交付申請書」に記載したとおり,平成28年度にはレーザ成形後のナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)製ノーズRバイトに対して熱化学反応を利用した乾式ラッピングを行い,刃先の丸み半径を1 nm前後に成形できる乾式ラッピング技術を開発することを計画した,また,乾式ラッピング後のNPD製ノーズRバイトに対して反応性イオンエッチングを行い,刃先の丸み半径を0.1 nm前後に成形できるドライエッチング技術を開発することを計画した.
熱化学反応利用した乾式ラッピング技術に関しては,NPD製ノーズRバイトを乾式ラッピングするツルーアとして使用したPCD製円板に振幅が300 nm程度の非同期振れが生じているため,現時点で刃先にサイズが500 nm前後の欠けが生じている.この非同期振れは,PCD製円板の成形に使用したDCサーボモータの主軸に過負荷がアキシャル方向に作用したことが原因であることを突き止めている.現時点で,PCD製ツルーアの成形に使用する装置の設計と試作を終了し装置の性能を確認するための研究を進めており,平成28年度に計画した研究を予定通り実施する.
刃先の丸み半径を1 nm以下に成形するためのドライエッチング技術に関しては,平成28年度に実施する予定であった研究を平成27年度に前倒して実施した.その結果,当初予定していた以上の研究成果を得ることができた.また,乾式ラッピングを行い刃先に欠けが生じたNPD製ノーズRバイトに対して酸素プラズマを用いたドライエッチングを行うと,刃先の欠けが消滅するだけでなく刃先の丸み半径を1 nm以下に成形できることが明らかになった.平成28年度以降には,刃先の欠けか消滅したメカニズムを解明するための研究を実施する.
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