本研究では使用済みガラス用研磨材に対し、大気中ドライプロセスにおいて、酸化セリウムを分離・回収するための手法とそのレーザー照射条件を明らかにした。 具体的には、酸化セリウムの主要な再利用法である薬剤を使用した化学的手法に依らず、乾燥させた使用済みガラス用研磨材に、大気中において808nm半導体レーザーを照射し、発生した蒸気をガラス基板に堆積させ酸化セリウム成分が含まれる白色蒸着物を回収した。回収物の成分分析を行った結果、主にCe、La成分が検出されたことから大気中において複雑な装置を必要とせず酸化セリウム成分の回収が可能となった。 さらに光学システムの構築を行い、レーザーの電流値を変化させることで酸化セリウム成分の濃度増加とガラス基板に堆積させた回収物の厚膜化のための実験を行った。電流値は25、30、35Aとした。照射スポットも変化させた結果、最大電流値35Aにおいてセリウム成分の原子比率は平均値で75%から88%に上昇し、ランタン成分の原子比率は平均値で25%から12%と減少した。また、研究当初の1.4μmから最大185μmまで厚膜化しCe成分を回収できた。 回収したCe成分を含む回収物に対し模擬的研磨試験を行った。模擬的研磨試験は、ガラス球を使用しステンレスディスクに対し、接触前に研磨スラリーを滴下し、一定荷重を付与した往復摺動とした。研磨試験は2種類(使用済み研磨剤、回収したCe成分を含む白色蒸着物)のスラリーを使用し、その濃度は5%とした。白色蒸着物の摩擦係数は、摩擦回数の増加とともに減少し、定常値では使用済み研磨剤スラリーの約58%の値を示した。使用済み研磨剤と比較し、回収した白色蒸着物のスラリーの算術平均粗さRaの変化はないものの、最大谷深さPVは使用済み研磨剤スラリーと比較し71%低減し、研磨特性向上に有効であることが明らかとなった。
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