研究課題/領域番号 |
15K05747
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研究機関 | 神奈川県産業技術センター |
研究代表者 |
安井 学 神奈川県産業技術センター, その他部局等, その他 (80426361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Ni-W / 金型 / めっき / ナノ / 厚膜 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究課題はNi-W厚膜構造体に必要な要素技術の開発である。成膜条件である電流密度と金属濃度の影響を受けると仮定して,実験を行った。電流密度は600,900,1200,1500A/m2の4水準,金属濃度は0.4,0.5,0.6,0.7,1.0Mの5水準とした。 実験結果として,金属濃度の上昇により,浴電圧は低下した。そして,浴電圧の低下による水素発生の減少がNi-W膜のW含有率を低下させ,膜の表面粗さを改善することを見出した。また,電流密度の上昇はNi-W膜のW含有率に影響を与えず,Raに影響を与えることを確認した。加えて,Ni-W膜はナノ結晶である金属間化合物Ni4Wとして析出すると考えられ,金属間化合物を介してWの析出電位が下がったと考えられる。 成膜速度については,Raを考慮して1200A/m2が妥当と考えた。W含有率については,ガラスに対する離型性に関連して,Ni-W膜のW含有率を20at.%程度に維持する必要があり,金属濃度は0.4Mが妥当と考えた。亀裂対策と表面粗さについては,Ni-W膜表面に吸着した水素が原因であるため,27年度に購入した電源を用いた高速パルス電流により,回避できる見通しである。これらの点を踏まえることで,Ni-W膜厚が得られると考えられる。 H27年度の成果は,ISPlasma2016において“Study of metal ion concentration in Ni-W bath for glass imprinting mold”と題して発表した。また,Ni-Wナノパターンの形成とNi-W金型を用いたアルミ合金の成型に関して投稿し,掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究課題であるNi-W厚膜構造体に必要な要素技術の開発に対して,Ni-W膜の表面粗さとW含有率に対してめっき時に発生する水素が影響するという知見を得た。具体的には,W含有率の点では,水素が発生できることが重要であり,表面粗さの点ではNi-W膜表面から水素を脱離させることが重要である。そして,金属濃度は0.4M,電流密度は1200A/m2が適切であり,パルス電流の周期はできるだけ高いことが好ましいという結論に至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度前半に平成27年度に得た知見をもとに,W含有率が20at.%程度のNi-W厚膜構造体を形成する。そして,平成28年度後半にナノパターンを形成した樹脂シート上にNi-W厚膜を形成し,ナノパターンを有するNi-W電鋳金型を試作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に購入した高速パルス電源が予定価格より安価に購入できたこと,謝金が発生しなかったことから残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は残額を物品費に充当することで,研究に必要な物品を賄う。また,学会発表や論文投稿を行うことから,旅費,謝金,その他の項目は予定のままとする。
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