研究課題/領域番号 |
15K05749
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
鍋澤 浩文 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (50416145)
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研究分担者 |
関 実 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206622)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ加工 / マイクロ・ナノデバイス / フッ素樹脂 / 反応性イオンエッチング / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
耐薬品性に優れたフッ素樹脂製マイクロ流体デバイスを開発するために、RIE法によるフッ素樹脂の表面形態形成メカニズムの解明と、フッ素樹脂材料に適したエッチングマスク形成技術に関する技術開発を行った。 耐熱性に劣るバルクポリマー用に開発した磁場支援型RIE装置を用いて、代表的なフッ素樹脂であるPTFEとPFAのエッチング特性を調査した。酸素プラズマによる微細加工において、プロセス圧力を0.1Paから2.0Paまで段階的に変化させ表面形態観察を行ったところ、0.1Paから0.5Paの圧力範囲では未処理材に匹敵する平滑加工面が得られ、それ以上の圧力条件範囲では直径がナノメートルからサブミクロンの芝状構造が得られることを見出した。各圧力条件下における加工表面の元素分析結果から、芝状構造が真空チャンバーや試料ホルダーから飛来した金属のマイクロマスクにより形成されるメカニズムを明らかにし、各圧力条件下における酸素の平均自由行程と芝状構造に強い相関のあることを示した。 シリコーン樹脂が、非粘着性のフッ素樹脂に粘着性があり、さらに酸素プラズマ耐性に優れていることを見出し、シリコーン樹脂の一種であるPDMSをエッチングマスクに用いる手法について検討した。通常のレプリカモールディング法ではPDMS膜に貫通孔を形成できないため、SU-8モールドに硬化前のPDMSを流し込んだ後、架橋抑止剤であるアミノシランを成膜してある樹脂フィルムをプレスしながらPDMSを硬化する貫通孔形成手法を開発した。直径、あるいは一辺が100μm、150μm、200μm、250μmの円、正三角形、正方形の貫通孔を持つPDMSステンシルマスクを用いてPTFE、PFAバルクプレートを酸素プラズマ処理し、マスク形状を寸法精度2%以内で転写することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フッ素樹脂の酸素プラズマ処理による表面モフォロジー形成メカニズムの解明は、表面元素分析のマップ分析を用いることにより、当初の予定通り行うことができた。PDMSステンシルマスクについては、アミノシランを塗布する樹脂膜の選定やアミノシラン濃度の最適化について試行錯誤を繰り返したが、当初の予定期間内に形成手法を開発することができた。加えて、PDMSマスクを用いたフッ素樹脂の微細加工という、当初の計画以上の成果が得られており、概ね当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる平成28年度は、今年度得られた知見をフッ素樹脂製マイクロ流体チップ作製技術へと発展させることを目標とする。具体的には、マイクロ流路パターンを形成したPDMSステンシルマスクを作製し、このマスクを用いて深さ200μm以上のマイクロ流路を持つフッ素樹脂プレートの作製を目指す。また、PDMSマスク以外にもチタンや酸化シリコンなどをエッチングマスクに用いたPTFE、PFAのエッチング特性の調査や、これらをマスクに用いたマイクロピラーアレイ構造の形成を試みる。さらに、フッ素樹脂の中でも熱可塑性を持つPFAを用いて、熱融着について検討を行う。マイクロ流路を形成したフッ素樹脂プレートを用いて断面形状や融着面積等より融着条件の最適化を図った後、各種有機溶媒をマイクロ流路に導入し、漏れや滲みなどについて評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
エッチングガスや実験用試薬類について、当初予定よりも購入額が少額に収まったため。
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次年度使用額の使用計画 |
マイクロ流体デバイスをパターニングするためのフォトマスクや実験用試薬類について使用する予定。
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