研究課題/領域番号 |
15K05750
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
川原 浩一 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (00302175)
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研究分担者 |
鈴木 俊正 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (60725737)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 化学機械研磨(CMP) / 化学作用 |
研究実績の概要 |
本年度はワーク/砥粒相互作用の直接評価のための液中AFMによる評価法確立と、サファイア基板のCMPにおける研磨挙動の温度依存性に関する検討を行った。 (1)ワーク/砥粒相互作用の直接評価のための液中AFM評価技術確立 本年度は液中AFM評価の際に用いるカンチレバー先端に用いる球状粒子の合成条件について検討を行った。ガラス精密研磨で用いられているセリア系砥粒を模擬したLa添加CeO2の噴霧熱分解法による球状粒子合成条件を検討した。その結果、原料溶液に硝酸塩のみを用いると、いびつな形状の粒子となることが分かった。そこで、溶液条件の検討を行い、酢酸を添加することで比較的均質な球状粒子が合成可能となった。ただし、合成された粒子の平均粒子径は約0.8 umと小さく、カンチレバー先端に取り付けることが困難であった。今後は更なる合成条件の検討を行い、ハンドリング可能なサイズの球状粒子を合成する条件の最適化が必要である。 (2)サファイア基板のCMPにおける研磨挙動の温度依存性 コロイダルシリカスラリーを用いたc面基板のCMPでは、研磨速度と温度の間にアレニウスの関係が認められた。アレニウスの関係から見積もった活性化エネルギーは、Al-O結合の切断に要するエネルギーよりも小さな値であった。したがって砥粒/ワーク間の化学作用によってAl-O結合の切断に要するエネルギーが低くなっていると考えられる。すなわち、砥粒/ワーク間の化学作用は、Al-O結合を切断するためのエネルギーを低減する一種の触媒作用であると考えられる。c面基板と比べて研磨速度が低いa面基板を用いた場合、活性化エネルギーはc面基板とほぼ同じであり、化学作用のメカニズムは同じであることが示唆された。一方で、a面基板の研磨速度はc面基板と比べて半分程度であり、両者の差違は研磨メカニズムの差違ではなく、研磨活性点の差違であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は液中AFM法による評価技術の確立において、カンチレバー先端に用いる球状の砥粒材料合成の合成条件検討に研究期間の大半を費やした。砥粒とワーク間の液中での相互作用を直接評価するのが本研究の目的であるため、形状がいびつな粒子では接触状況が変化しやすいため、均質な球状粒子が得られる合成条件の探索を行った。そのため、カンチレバーの試作にまで至らなかったのが「やや遅れている」理由である。 一方で、サファイア基板を用いたCMPにおける温度依存性評価を行った結果、化学作用性を評価する一つの方法として、温度を制御することが有効であることが示唆され、今後の液中AFMによる評価方法へと展開可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
カンチレバーに用いる球状粒子の合成条件について、本年度の検討によってある程度の目処が立った。しかしながら、カンチレバーの試作においては、粒子径を大きくする必要があることが分かった。そこで、今後は球状粒子のまま、粒子径を大きくする合成条件の検討を行い、液中AFM法による評価を開始する予定である。また、ZrO2やAl2O3およびSiO2についても合成条件の検討を行っていく予定である。 また、本年度の検討で、温度を制御することでCMPにおける化学反応性を変化させ得ることが明らかとなったため、得られた知見を液中AFM法による評価方法へと取り込み、砥粒/ワーク間の相互作用の定量評価方法の確立を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はLa添加CeO2球状粒子の合成条件探索に予想よりも多くのリソースを費やした。その結果、粒子合成に必要な物品費が当初予定よりも多く必要となり、予定していた国際会議における情報収集を取りやめた。国際会議参加のための旅費を必要な物品購入へと転用したが、約10万円分が次年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も引き続き球状粒子合成条件探索が必要であること、また市販のコロイダルプローブが当初予想よりも多く必要であるため、本研究遂行のために有効に使用していく予定である。
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