本研究は、精密研磨で多用される化学機械研磨(CMP)に用いられる砥粒について、砥粒自身が機械的作用と化学的作用の両方を併せ持つ材料の、特に「化学的作用」に着目した評価方法の確立を目指すものである。これまでの研究によって、CMPにおいては、砥粒/ワーク間の化学作用が非常に重要な役割を担っていることが知られているが、化学作用の定量評価はほとんど行われていない。 本年度は、これまで得られた結果についてさらに検討を進め、噴霧熱分解法で合成したセリア系粒子について、粒子表面におけるセリウムの価数変化や、La添加による影響、粒子強度の影響について、研磨特性との相関について検討を行った。その結果、セリア系砥粒によるガラス研磨特性には、砥粒表面の3価のセリウムに依存して、化学的作用性が変化することが明らかとなった。また、La固溶の影響と、3価のセリウム割合、およびガラス研磨特性との比較を行うことで、ガラス精密研磨用砥粒の研磨特性においては、3価のセリウムの割合に最適値があることが示唆された。 また、本研究では、サファイア基板研磨に用いられるシリカ砥粒を用いて、化学作用性の一つの評価方法として、研磨特性の温度依存性を評価する方法を検討した。その結果、研磨速度と温度の間にはアレニウスの関係が成り立っており、砥粒が持つ化学作用性を定量評価できる可能性が示唆された。研磨特性が大きく異なるサファイアc面とa面の研磨挙動と温度の関係を調べた結果、両者の差違は主に前指数項によることが明らかとなった。この結果は、砥粒とワークの化学的作用は同じであるが、研磨活性点が異なることを示しており、化学作用性の違いによる研磨挙動の差違の原因を示した。 ガラス研磨用のセリア系砥粒については、3価のセリウム割合を制御することで、研磨特性を制御しうることがわかった。
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