研究課題/領域番号 |
15K05754
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三谷 純 筑波大学, システム情報系, 教授 (40392138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 折りたたみ構造 / 平坦折り / 折り紙設計 |
研究実績の概要 |
伸縮しない平坦な素材に対し、「折り」の操作だけで形を作る折り紙の技術を工学的に応用するための基礎研究を継続して行った。具体的には、前年度までに行った、平坦に折りたたみ可能な立体形状の生成手法の改善に取り組み、これまでは手作業で行っていた形状分割、編集作業を、任意の形状入力対してほぼ自動で行う方法を考案し、その手法をシステムとして実装することを行った。このシステムでは、平坦に折りたたみたいと考える立体形状を入力とすると、その立体を複数の凸多面体の集合に自動分割し、それぞれの凸多面体を平坦に折りたたみ可能とするための形状操作を行う。それらを接合することで、立体形状全体を折りたたみ可能なモデルで近似表現する。この手法は、立体の一部を切開することと、折りたたみを行う辺が平行であるという制約があるため、今後は、対象とする形状の自由度を高めることを検討する必要がある。これとは別に、平面上の45度格子パターンから作り出される形状列挙に関する基礎研究を継続し、局所的には平坦に折りたたみ可能であるが、全体では紙の衝突によって折りたためないという性質を持つ展開図を複数見出した。これは、古くから折り紙の平坦折りに関する重要な研究分野の1つに対して、新しい知見をもたらす成果である。またさらに、3次元空間における曲線形状をリアルタイムで取得できる電子デバイスを用いた、曲線折り形状の対話的生成に関する研究、正三角形格子パターンから得られる立体折り紙形状の対話的な生成システムの研究開発、軸対称で平坦折可能な多面体構造を持つ折り紙の生成および挙動シミュレートシステムの研究開発など、複数のテーマについて並行して研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、スリットの入った素材による形状設計は、切り込みのある折りたたみ可能構造を持つ立体モデル生成手法として、ほぼ実現の目途が立った。現在、論文を執筆し、国際会議への投稿を準備しているところである。 折り工程のコスト削減を目的とした形状設計は、その課題の難しさから、実現には至っていないが、軸周りの回転対称性を持つ立体を対話的に設計するシステムによって、軸周りへ剛体折りによる平坦折り可能な形状生成が実現した。この成果も、現在論文を執筆し、学会誌への投稿を準しているところである。 その他に、対話的な曲線折り形状の生成や、正三角形格子パターンによる立体折り紙の設計手法、45度系格子パターンから作られる平坦折り紙の設計など、複数の成果を得ることができ、おおむね当初の予定通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗はおおむね予定通りであり、計画通りに進んでいる。次年度は本研究課題の最終年度となるため、得られた成果を論文にまとめ、積極的に対外発表をしくことを考えている。また、折り紙の技術の重要性を広く啓蒙するためのアウトリーチ活動も継続していく予定である。本研究を通して得られた知見を、産業に活用するために、民間企業との共同研究の実現も模索していきたいと考えている。
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