研究課題/領域番号 |
15K05758
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
金子 覚 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90161174)
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研究分担者 |
田浦 裕生 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20334691)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気しゅう動接点 / 球面ライダ / 円弧溝付ディスク / 通電特性 / 摩擦特性 |
研究実績の概要 |
本研究は,小型DCモータのブラシなどに広く使用されている電気しゅう動接点の性能向上を目指して,潤滑状態下で広範囲の運転条件(高いしゅう動速度,低い押付け荷重の範囲まで)で通電可能とするしゅう動面形状を提案することを目的としている.具体的には,運動面側に円弧溝を設けたディスクと,静止側にしゅう動面が球面形状を有するライダの組み合わせから接点を用いて,ディスク表面の円弧溝幅,溝ピッチ,ライダしゅう動面の球面曲率半径が,通電特性および摩擦特性に及ぼす影響を実験的,理論的に解析する.3年の研究期間の初年度である平成27年度の研究実績は次の通りである. 1.しゅう動接点部の油膜圧力,摩擦力に関する数値解析 (1)解析モデル:ライダ(静止側)と表面に油を塗布した回転ディスク間に静荷重を加え,電気しゅう動接点を形成した.形状パラメータは,ライダ球面の曲率半径,ディスク円弧溝の幅とピッチである. (2)静特性諸量:ライダとディスク間の溝形状を考慮したすきま分布のもとでReynolds方程式を数値計算により解き,油膜圧力分布を求めた.さらに得られた圧力分布より,静特性諸量(油膜反力,摩擦力,摩擦係数)を算出した. 2.実験装置の製作 (1)実験装置の改良:従来使用していたピン・オン・ディスク試験機において,駆動用ACサーボモータを更新し,回転ディスク,ライダ取り付け支持部をそれぞれ新たに製作した. (2)ライダとディスク:ライダ(SUJ2)とディスク(C3604)を新たに製作した. (3)測定系:摩擦力測定用の板ばね,接点部の通電状態検出用の開回路,データ処理系を新たに製作した. 3.予備実験:上記2.で新たに製作した実験装置,球面ライダ,円弧溝付ディスクを用いて所定の運転条件が設定できているか,測定装置が仕様を満足しているかを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度実施予定項目 1.しゅう動接点部の油膜圧力,摩擦力に関する数値解析 2.実験装置の製作 3.予備実験 のいずれに関しても,計画通り実行され,成果を上げることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画は,平成27年度に引き続いて,
1.数値解析(主担当 金子):接点の形状パラメータ(ライダ球面の曲率半径,ディスクの円弧溝幅とピッチ)を変化させ,接点部の最小油膜厚さと油膜反力,摩擦力,摩擦係数を算出する.さらに油膜剛性(最小油膜厚さの変化に対する油膜反力の変化量の比)を算出し,油膜剛性が小さくなる形状パラメータを調査する.油膜剛性を小さく設計することは最小油膜厚さが変化しても油膜反力の変化量が小さく,一定の押付け荷重もとで長時間安定した接触状態を維持できる要因となるためである. 2.実験(主担当 田浦) (1)通電特性,摩擦特性と形状パラメータ:各種運転条件下(押付け荷重,しゅう動速度)で,通電特性(分離度),摩擦特性(摩擦力,摩擦係数)を測定し,形状パラメータが通電開始時の運転条件(無次元軸受特性数)に及ぼす影響を調べる. (2)通電特性,摩擦特性の持続性:総運転時間一定のもとで,連続運転または繰返し間欠運転を行い,運転時間と通電特性,摩擦特性の関係を調べる.さらにこれら特性に及ぼす形状パラメータ,しゅう動面粗さの影響を調べる. 3.数値計算の妥当性(担当 金子・田浦):実験と同じ運転条件下で,通電開始時の運転条件(無次元軸受特性数),無次元摩擦力,摩擦係数を算出し,実験結果との比較により数値解析モデルの妥当性を検証する.また最小油膜厚さと油膜反力との関係から算出された油膜剛性と,長時間運転時における特性の持続性(安定性)との関係について調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
電気摺動接点の最新動向調査を予定していたが,調査先の都合により延期なり旅費が不要になっため
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次年度使用額の使用計画 |
延期になった電気摺動接点の最新動向調査を年度早々に実施する.
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