研究課題/領域番号 |
15K05767
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
武藤 一夫 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90530874)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アコースティックエミッション / デジタル検出 / カンチレバーアレイ / ニオブ酸リチウム / AEセンサ / シミュレーション / 電気的回路設計 / 製造プロセス |
研究実績の概要 |
本研究課題は,高額な半導体装置を使用し,複雑な構造を持ったMEMSアコースティック・エミッションセンサ(以下,AEと略す,)の代替として,比較的安価な装置で製造することができ,かつシンプルな構造にすることができるLiNbO3(ニオブ酸リチウム)材を用いた高性能な音響コム(櫛)型AEセンサの開発を行う.これは,異なる共振周波数(長さにより制御)を有した複数のカンチレバーを製造して,アレイ状に形成することで各共振周波数に応じた変位をディジタル式に検知し,その周波数特性の分解・検出(ディジタル化)を可能とする.H27年度では,LiNbO3材を用いた高性能な音響コムであるカンチレバー部の製作,合わせて検出部について一体化に向けた個々の特性評価を行った. 具体的には,音響コム型AE(振動検出)センサには,電気―機械エネルギーの変換効率が高く,高分解能が期待できるニオブ酸リチウムを使用した.音響コム型AEセンサの共振の狙いであるが,900MHz帯無線通信の2次中間周波数に使用された455kHzを中心に0.5~2倍程度の周波数にての試作を実施した.上記設計指針より,ニオブ酸リチウムの弾性定数より設計パラメータを計算すると,W×Tを300×200μmとすると,カンチレバー長は600~900μmで設計できた.また,作製したカンチレバーの共振周波数特性(変位,Q値)の評価を行い,シミュレーションをしたうえで,デバイスの最適化を図った.また,得られた共振周波数の特性に基づいて,カンチレバー部の変位を電気信号に変換するためのLiNbO3素子の設計を行い,高感度計測を実現するための電気的回路設計を行った.これらの結果をもとに,LiNbO3材カンチレバー製作するためのプロセスを確立し,目標とするAE センサの試作および最適化をとおして,周波数範囲10kHz~140kHz,周波数分解能5kHzを実現するディジタル検出方式AEセンサを実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンチレバーの共振周波数に関するシミュレーション結果より,簡易な半導体技術を用いることでデバイスを実現可能であることを検証し,さらに実際に変位測定部であるカンチレバーLiNbO3材を用いた素子の形成を行い,「LiNbO3材を用いた高性能な音響コム型アコースチック・エミッション・センサ」の実現させた.H27年度の計画では,LiNbO3材を用いた高性能な音響コムであるカンチレバー部の製作,合わせて検出部について一体化に向けた個々の特性評価を行えた. デバイスの設計指針に基づき, LiNbO3材を用いた高性能な音響コム型カンチレバーを製作するためのプロセスを確立した.センサの試作には同じLiNbO3を用いた音さ型センサ(MEMSジャイロ)を製造している多摩川モバイル電装へ委託をした.その際にウェハ加工~パターニングが特注となり,特に半導体製造にも使われるフォトマスクであるが,センサ特性の調整に密接な役割を持つことになる.作製したカンチレバー型センサの共振周波数特性を評価するため,デバイスを LiNbO3素子に張り付けた状態で強制振動を付加し,ネットワークアナライザにより変位測定を行うことで,共振特性(変位および周波数)を各カンチレバーに対して取得した.マスクレイアウトの再設計およびデバイス作製を繰り返すことによって作製プロセスの最適化を図る.同時に,計測された変位を周波数解析してQ値の評価を行うことで,各カンチレバー間のクロストークの影響も調査を行った.Q値は,カンチレバー間で分離可能な周波数分解能に影響するため,高いQ値を得る必要がある.これは,減衰係数を考慮した構造解析も行うことによって作製プロセスの最適化を図る.デバイスの設計指針に基づき,LiNbO3材抵抗素子によるカンチレバー用のフォトマスク作製を行い,LiNbO3材抵抗素子を形成して抵抗率などの電気的特性について評価を行った
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目では,試作した LiNbO3材を用いた高性能な音響コム型デジタル式AEセンサの実用化するうえで必要なデータ取得方法や計測システムの有用性,妥当性の検証を行うものとする. さて,LiNbO3は高い共振先鋭度と減衰特性を持ち,共振周波数に合致した場合は高い感度を有すが,共振周波数を離間させた場合にその周波数間は高い減衰領域になってしまうことが予想されるため,有効帯域は非常に狭い.これを使いこなすためには各種アクティブフィルタ技術が必要になってくると思われる.また,前述したように周波数変動要因(温度特性ほか)についても,補正アルゴリズムが必要になることから,それらが実際の故障検知したい対象物の測定に有効かどうかの検証が必要になってくるものと思われる. また,このように集めたデータをサーバに集積解析することにより,推定寿命の計算やメンテナンス時期の計画などに応用できるものとなる. しかし,これらについては,次年度以降の開発テーマと想定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用予定の計測機器の調査をして,次年度購入のため残した.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の測定機器を使用し,試作センサ実用化のためのデータを収集する計画である.
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