研究課題/領域番号 |
15K05772
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
平岡 弘之 中央大学, 理工学部, 教授 (20165161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ライフサイクル工学 / 部品リユース / ベイズ推定 / ネットワークエージェント / 循環型社会 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,部品エージェントシステムを用いて部品のリユースを促進するために,ユーザの利用状況と部品の状態をもとに部品の交換をアドバイスする手法を開発することである.このために平成27年度に以下の研究を実施した. [A] ベイズ推定とライフサイクルシミュレーションを組み合わせた部品エージェントシステムの開発:すでに開発した拡張ライフサイクルによる部品のライフサイクルシミュレーションに,ベイズ推定を用いた故障予測とプロスペクト理論に基づくユーザ行動の予測とを組み込んだ.前者は,故障の因果関係ネットワークをもとに部品の劣化情報に基づいて故障の確率を更新するしくみであり,後者は,ユーザのリスク回避の性向をユーザが行動を選択する確率に反映させるしくみである.これにより,ユーザ行動を含むより適切な部品状態の予測を組み込んだライフサイクルシミュレーションを開発できた. [B] 部品エージェントの情報を提示する端末の開発:故障予測により交換が推奨される部品の製品からの取り外しを支援するしくみを開発した.このしくみは,まず,組立構成の基本部品に添付したマーカをカメラにより撮影し,画像処理することで,組立品の3次元の位置姿勢を把握する.次に,部品エージェントがもつ設計時の組立構成情報により当該部品の交換のための組立品の分解手順を,カメラ画像にオーバレイ表示する.これにより,部品交換時に適切な部品交換方法をユーザにわかりやすく提示するしくみができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
[A] ベイズ推定とライフサイクルシミュレーションを組み合わせた部品エージェントシステムの開発については,ベイズ推定とライフサイクルシミュレーションを組み合わせた予測手法,およびユーザ行動モデルの開発は進展したが,故障とその影響のシミュレーションが実装されていないために,手法の有効性を明確にできていない.また,当初予定していた劣化・故障モデルの開発については手がつけられなかった.これらは次年度の課題とする. [B] 部品エージェントの情報を提示する端末の開発においては,WebカメラとRFID R/Wを組み込んだ端末ハードウェア10台を製作する予定であった.しかし,現状はパソコンによるプロトタイプシステムの開発にとどまっている.分解手順の表示については想定以上に進展したものの,部品の状態表示機能,適切なアドバイスの表示方法についてはまだ完成に至っていない.これらも次年度の課題とする.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に述べた平成27年度の残課題に取り組むとともに平成28年度に予定した研究項目を実施する.劣化・故障モデルについては,振動によるHDDの劣化を想定していたが,初期実験では思うような結果が得られておらず,熱など他の要因による劣化の研究へ変更する可能性がある.その場合,予定していた加振器の購入を他の実験装置の購入に変更する.部品エージェントの情報を提示する端末の開発は予定通り実施するが,まずプロトタイプ1台を製作し,その結果をフィードバックするかたちで複数台の製作を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況で述べたように,WebカメラとRFID R/Wを組み込んだ部品エージェントの情報を提示する端末の開発で,パソコンによるプロトタイプシステムの開発を行ったものの,端末ハードウェア10台の製作にいたらなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
確実に開発を進めるために,まず1台のプロトタイプを製作したのち,その成果をもとに端末ハードウェア9台の製作を行う.
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