研究実績の概要 |
歯面温度が上昇しやすい高面圧下での歯面温度予測手法の確立を目指すことを目的とし,従来高面圧下での計測に適用されていた硬質ニッケルメッキを用いる(横山他,1971)手法で生じる問題を回避するため,単一金属を用いる手法に関する基礎的研究を行った.今回の試験ではSUS316にプラズマ浸炭,S55Cに高周波焼入れを施し,その組合せで熱電対とした.プラズマ浸炭を施したSUS316歯車を交互欠歯車とすることで,二歯かみ合い領域での計測を可能とした.さらに,歯面にクラウニング加工を施すことにより,高面圧条件(1.5GPa程度)での試験を可能とした.ちなみに,プラズマ浸炭したSUS316の表面硬さは1080HVで,高周波焼入れしたS55Cの表面硬さは,630HVであることを別途作製した試験片にて確認を行った.得られた結果を以下に示す. (1)単一金属で硬化が可能で材料入手も容易なSUS316,S55C,SUJ2の組合せ時の比較を行い,熱起電力の最も大きな材料組合せに関する調査を行った.その結果,熱起電力が最も大きかったSUS316とS55Cの組み合わせに高面圧での試験が可能なようにそれぞれプラズマ浸炭処理,高周波焼入れの処理を行い,その組合せでの熱起電力を調査し,動的熱電対法による温度変換式の作成を行った. (2)作成した温度変換式に基づき,動的熱電対法による高面圧下(1.47GPa)での計測を行った.Blokの式(Blok,1937)に表面粗さと形成される油膜厚さを考慮して算出される歯面摩擦係数の式(朝鍋,松本,1986)を適用した結果,試験結果と計算結果が良好に対応していることを見出した. 今後,高面圧下で歯形や潤滑油などが歯面温度に与える影響に関して研究を進める可能性を見出すことができた.
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