研究課題/領域番号 |
15K05782
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
川島 久宜 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50399531)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 流体工学 / 可視化 / 混相流 / 気泡 |
研究実績の概要 |
キャビテーションの崩壊にともなう強い圧力は流体機械の振動,騒音の要因の一つとなる.本研究はキャビテーションの崩壊圧力の抑制に関して不溶性冷媒液体を用いることを検討している.本研究で提案した不溶性冷媒液体の注入による崩壊圧力抑制メカニズムを明らかにするために単一気泡の膨張・収縮運動に注目した実験を実施した. 実験は第一に大気圧下で水中に単一の空気気泡を生成し,その周囲圧力を急速に水の飽和蒸気圧力以下まで減圧することで気泡の膨張運動を促す.その後,周囲圧力を水の飽和蒸気圧力を上回るまで回復することで気泡の崩壊を得る.この時の気泡の半径運動を高速度カメラを用いた可視化計測と崩壊圧力を計測した.本実験により水中に発泡した空気気泡の崩壊にともなう圧力は,最大で大気圧力の 4倍程度まで達することを確認した. 単一の HFE液滴を水面に対して滴下すると,空気気泡を内部に持つ HFE液体が水中を落下する.本研究では,この水中を落下する HFE液滴の空気気泡を対象に,上述した実験と同様に減圧および圧力回復実験を行い,その時の可視化計測と崩壊圧力計測を実施した.HFEは水よりも飽和蒸気圧力が高いため,気泡の膨張は水中で発泡する空気気泡と比較すると格段に大きいものの,崩壊にともなう圧力は 1気圧以下となることを見出した.両者の運動に対して Brenenn(1995)が提案した熱的パラメータを算出した結果,HFE液体を用いた場合の方が水中に発泡した空気気泡よりも十分大きいことを示した.得られた結果より,HFEから発泡する気泡の運動は,気液界面における熱輸送の影響により崩壊運動を緩和させ,その結果崩壊圧力を抑制する効果が有ることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた実験装置の構築に関しては予定通り実施することができた.より詳細な知見を得るためには気泡の崩壊を促す圧力回復に関して改善の予定があると思われる.今後実験装置の最適化を行う予定である. 共沸系単一気泡の運動に関する数値計算コードの構築に関して,研究論文を調査しており開発する数値モデルを調査している.今後計算モデルの構築に着手する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
単一気泡の運動に関する実験では,減圧時間,圧力回復量,圧力回復勾配を変化させた実験を行い,不溶性冷媒液体を用いた場合に高い崩壊圧力が生じる条件の有無を調べる予定である.実験と平行して実験結果を模擬できる数値計算モデルの構築を予定してる. 研究協力者として当初大学院生1名を予定していた.しかし,予定していた当該学生の進路変更を余儀なくされたため,研究体制を修正する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中の論文があり,その掲載費用として使用するため繰越金が生じた.また,2016年3月に出席した国際学会の諸経費を予定していために繰越金が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度末での旅費分,投稿中論文費用を勘案して平成27年度分の一部を計画的に平成28年度に繰り越している.研究計画に大きな変更などは無いが,物品購入費,旅費などに使用することを予定してる.
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