研究課題/領域番号 |
15K05784
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三神 史彦 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40272348)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粘弾性流体 / ひも状ミセル水溶液 / 波動 / せん断波 / 粘弾性マッハ数 / マッハコーン / モード波 / 粒子画像流速計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,粘弾性をもつ界面活性剤のひも状ミセル水溶液を中心に,粘弾性流体の複雑で特異な流れ現象を流体中の波動伝播の観点から見直して見通しを良くすることを目指しており,平成27年度は,波動の伝播の様子を計測するためのPIV計測システムを整備して,以下の研究を行った. (1) ひも状ミセル水溶液の濃度と対イオンのモル比が溶液中のせん断波の伝播速度と減衰比に与える影響について,溶液中で平板がインパルス的に面内で運動したときに発生する平面波を計測することによって調べた.ここで得られた知見から,波動伝播が顕著に現れる条件が明らかになり,実験に用いる溶液や容器サイズ,物体の運動速度の変動時間スケールを決める重要な手がかりを得ることができた.また,単一緩和時間をもつMaxwellモデルを用いて,一次元の波動伝播の様子を差分法による数値計算で解析し,実験と比較できるようになった. (2) せん断波の伝播速度より大きな速度で運動する球まわりの流れについて,球のまわりにせん断波によるマッハコーンが生じる様子をPIV計測によって明らかにし,粘弾性マッハ数と観測されたマッハ角の関係を調べた.粘弾性マッハ数を算出するために必要な流体の物性値を,従来のレオメータによる動的粘弾性測定ではなく,平面波の伝播速度の直接計測によって得ることを試み,研究の省力化につなげた. (3) 二次元吸い込みの上流に形成される流動層の流れをPIV計測によって測定し,スリット部から上流に伝播するモード波の様子について調べた.また,容器内での粘弾性流体の複雑な流動にはモード波が深く関わっていると考えられることから,別の実験で,矩形容器内に形成されるモード波の管軸方向の伝播速度と周波数の関係をPIV計測によって調べ,モード波に関する基礎的なデータを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘弾性流体中の波動伝播の様子を計測するために新しく導入したカメラと画像解析システムは,基本的な設定と動作確認が済んだ状態で納品されているため,直ちに測定にとりかかることができた.カメラ動作や画像取込み方法について,これまで蓄積した技術的な知識を適用することにより,おおむね計画どおり研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
粘弾性流体中の波動現象は,進行波と定在波の問題の二つに大きく分けることができる.それぞれについて,以下のような研究を進める. (1) 進行波の問題では,球まわりの流れの問題と,同心二重円筒容器中で内円筒が回転を開始するときの流れの問題について,粘弾性マッハ数に着目しながら調べていく.球まわりの流れについては,マッハコーンの形成による抗力への影響や,球から発生するせん断波の干渉による流れ場への影響を明らかにする.回転円筒については,せん断波の伝播速度に対する周速度の比を変えて実験を行い,特性曲線との関係などについて検討する.また,進行波の問題の一つとして,振動平板から発生するせん断波の減衰波形を調べ,高周波領域での動的粘弾性測定を試みる. (2) 定在波の問題では,二次元吸い込みに流入する流れ場の形成とモード波の上流伝播の関係を明らかにするため,波動が特に顕著に現れる条件を選択して実験を行う.また,粘弾性流体中でのモード波の基本的な性質を明らかにするため,モード波の分散関係について詳細を調べる.
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