本研究では乱流輸送現象における高レイノルズ数効果の解明を目的として、 (1) まず次世代スパコンを視野に入れた乱流の直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation、DNS)手法の開発を実施した。高次精度差分法及びスペクトル法を用いたDNSコードにおいて超並列時に負荷の高いall-to-all通信をオーバラップ化された隣接shift通信に代替することにより、高効率化を実施した。開発コードにおいては、8640x4096x6144格子(約2200億点)を用いた世界最大摩擦レイノルズ数8000のチャンネル乱流場解析において、実行演算速度70Tflop/s(NEC SX-ACE/2048ノード使用時、実行効率14%)を達成した。 (2) 開発コードを使用して、世界最大レイノルズ数におけるDNSデータベースの構築を行うとともにその信頼性を確認するとともにデータベースをWeb上に公開した。 (3) 得られたデータベース解析により、理論的に予測されていた壁面乱流場における平均速度及び主流方向乱流強度における対数則分布を数値的に初めて確認することができた。一方、対数領域の壁面高さ及びスペクトル解析においては理論との差異が生じており、修正理論の適用を含めた詳細解析を行う必要性があることが判明した。 (4) 本コードを各種乱流輸送現象解析に適用し、LES(Large Eddy Simulation)及びRANS(Reynolds Averaged Navier-Stokes Simulation)における乱流モデリングの評価及び高精度化を実施した。
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