本研究の目的は,樹木のような物体の空気抵抗のメカニズムを,樹木など自然界の物体が持っているフラクタル形状(縮尺に依らず,形状が相似形)に着目し、樹木に掛かる抗力と後流乱流を測定することにより、解明することである。この目的のために、樹木の樹冠と同じフラクタル次元をもつシェルピンスキー四面体を樹木のモデルとして採用し、この人工物に掛かる抗力と周囲の流れの測定を行う。研究の最終年は,段数の影響を調べるために,前年の2倍の大きさの樹木モデルを3次元プリンターで作成し,抗力および後流の速度分布を測定した。多重度が最大(4段)の場合,3段以下のものに比べ,抵抗係数(CD値)が0.8から0.6に低下した.力の変動値の周波数解析をすると,スペクトルの形状は風速によらず,測定系の固有振動が出ていることがわかった.この影響は風速に反比例して小さくなり,本実験の最大速度22m/sでは1%以下であった。後流の速度分布を半値幅と最大速度欠損で整理すると,後流の広がりは下流に行くに従って,ゆっくり広がっており,速度欠損の減少速度が一般的な物体の後流より遅い(距離のべき指数が小さい)ことがわかった.速度分布は半値幅を基準に正規分布より尖った分布となり,運動量の解析よりこれが抵抗を小さくしている要因であることが示唆される.変動値の分布に関しては,ピトー管測定では管内の気柱共鳴により変動値を過大評価することが,熱線流速計測定の比較でわかった。勾配拡散を仮定し,混合距離を評価したところ,混合距離はシェルピンスキー四面体の最小四面体の大きさでまとめられることがわかった.
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