研究課題/領域番号 |
15K05795
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
住 隆博 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30358668)
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研究分担者 |
黒滝 卓司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 上席研究開発員 (20358659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ディーゼル噴霧 / 気液二相流 / 圧縮性 / 数値流体力学 / 拡散界面モデル / シャープ界面モデル |
研究実績の概要 |
液体燃料の超高圧噴射時におけるノズル噴孔内流動と噴霧微粒化過程の実用的な数値解析を行うためには、気液相の圧縮性効果に加え、特にキャビテーション現象による相転移効果を考慮した高精度気液二相流解析コードを開発する必要がある。今日における圧縮性気液二相流の数値解法は気液界面の取り扱いに関して、熱力学モデルの構築を必要とする「拡散界面モデル」と幾何学的な追跡を必要とする「シャープ界面モデル」に大別されるが、それぞれ界面捕捉性や質量保存性について一長一短があることが知られている。本年度も前年度に引き続き、研究代表者(住)が「拡散界面モデル」を、研究分担者(黒滝)が「シャープ界面モデル」を担当して、それぞれ別のアプローチから研究ならびにコード開発を進め、協力して両数値解法の検証ならびに妥当性の検討を行った。本年度は特にキャビテーション現象を想定した相転移効果のモデル化とそのコード開発、ならびに相転移を伴わない超高圧燃料噴射の予備計算に注力した。 住は、拡散界面モデルによるアプローチをついて、前年度までに開発が完了した熱化学緩和モデルによるキャビテーション生成の検証解析を行うとともに、二次元の微細単噴孔ノズルを対象に相転移を伴わない機械緩和モデルによる超高圧燃料噴射シミュレーションを実施した。黒滝は、シャープ界面モデルによるアプローチについて、相転移を扱うための手法を研究し、レベルセット法による既存コードの拡張を行った。 以上の主な研究成果について、平成28年度衝撃波シンポジウムにて2件の報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡散界面モデルによるアプローチについては、前年度までに6方程式モデルをベースとした熱化学平衡モデルの定式化とコード開発が完了したので、いくつかの単純な気液二相流の衝撃波管問題について、キャビテーション現象の再現可能性について検証を行った。その結果、二相二成分(液体燃料とその蒸気)について、キャビテーション現象の考慮が可能であることを確認した。また、二次元の微細単噴孔ノズルを対象に、相転移を伴わない機械緩和モデルによる超高圧燃料噴射シミュレーションを実施し、実験的に予想されるジェット先端における離脱衝撃波の発生を確認した。また、燃料の噴射圧と周囲空気の背圧を様々に変更し、それらが燃料ジェットの界面形状や衝撃波生成に及ぼす影響について検討した。 シャープ界面モデルによるアプローチについては、前年度までに開発したレベルセット法による基本コードをベースに、相転移効果を模擬する物理モデルの開発と導入を行った。シャープ界面モデルにおいて相転移効果を考慮する場合、前述の拡散界面モデルとは全く異なるアプローチが必要となり、界面における質量流束を表すために、分子動力学的理論によるモデルを導入する必要がある。今年度は上記の質量流束モデルを数値スキームに厳密に反映させる定式化の構成に注力した。検証解析として単一キャビテーションバブルの崩壊現象に関する一次元球対称シミュレーションを行い、界面における凝縮と蒸発を伴うバブルの収縮と膨張について実験値と良好な一致を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
拡散界面モデルによるアプローチについては、二次元の微細単噴孔ノズルを対象に、相転移を伴う熱化学平衡モデルによる超高圧燃料噴射シミュレーションを実施し、ノズル内のキャビテーション生成が噴孔出口後の燃料ジェットの界面形状や衝撃波生成に及ぼす影響について調べる予定である。ただし、その際には液体燃料とその蒸気および周囲空気からなる二相三成分における熱化学平衡を考慮する必要があるため、前年度までに開発が完了した二相二成分の相転移モデルの理論的拡張とコード開発を行う。 シャープ界面モデルによるアプローチについては、相転移効果を考慮したコードを二次元に拡張し、微細単噴孔ノズルからの超高圧燃料噴射を模擬する手法について調査及び定式化を進め、コード開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
高性能ワークステーション(研究代表者と研究分担者それぞれ1台、計2台)の購入額が当初想定していた額をかなり下回ったこと、ならびに研究の進捗状況に照らし合わせて学会参加を一部見送ったことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度に当たるため、学会参加(6件程度、計400千円)による積極的な情報発信を行う。また、並列計算を想定したFortranコンパイラの整備(2本、計400千円)や可視化ソフトの保守(2本、計300千円)およびノートPCの購入(2台、計400千円)を見込む。
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