研究課題/領域番号 |
15K05799
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日高 芳樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70274511)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 弱い乱流 / 南部-ゴールドストーン・モード / デバイ型緩和 / 乱流誘起摩擦 / 非熱的ブラウン運動 / 劣拡散 / ホッピング拡散 |
研究実績の概要 |
(1) 連続回転対称性の自発的破れに伴う液晶配向の南部-ゴールドストーン(NG)モードの存在する液晶ホメオトロピック系では、対流とNGモードの相互作用によって弱い乱流が生じる。NGモードは磁場によって抑えることができるので、磁場印加によって対流パターンは秩序化される。この外力応答について、交流磁場に対する応答を、系全体で平均された対流パターンの秩序度によって観測した。その結果、応答はデバイ型緩和で表されることが明らかとなり、複素感受率の結果から乱流誘起摩擦の緩和時間を得た。 (2) ホメオトロピック系において、弱い乱流から中程度の乱流に至る過程で、乱流拡散がどのように変化するかを微粒子の運動の観測(非熱的ブラウン運動)から明らかにした。その結果、弱い乱流に存在する液晶配向の線状構造と類似の構造が、中程度の乱流では高密度で存在し、その構造による跳ね返り効果によって劣拡散(sub-diffusion)が現れることがわかった。 (3) 連続回転対称性が強制的に破れた液晶プレーナー系の弱い乱流(欠陥乱流)について、非熱的ブラウン運動の観測を行った。その結果、対流ロールの揺らぎである欠陥乱流は、周期ポテンシャルとその揺らぎとみなすことができ、ロールにトラップされた粒子がたまに隣のロールにホップするホッピング拡散を示すことがわかった。ホッピング頻度の制御パラメータ依存性から活性化エネルギーを得た。 (4) 欠陥乱流の時空構造の揺らぎの性質を明らかにするために、動的画像解析法を用いて構造関数の時間相関関数を得た。その結果、対流と液晶配向が活性化因子-抑制因子系をなすことによるホップ不安定性による振動成分と、対流パターンの位相拡散による単純緩和成分の重ね合わせによって表されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書や交付申請書に記載した研究計画の5項目のうち、3項目について研究を開始しているかほぼ完了(論文執筆)しているため、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで順調に進展しているが、南部-ゴールドストーン・モードと優拡散(super-diffusion)の関係や、欠陥乱流の時空ダイナミクスの位相による記述など、新たな課題も見つかっている。当初の計画でまだ行っていない項目に加えて、これら新しい課題についても取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
取り組む課題の順番を当初の計画から変更したことにより、現有の物品による研究が可能であったため、物品費に次年度使用額が生じた。また、とくに進捗が著しいテーマがあったため、学会発表より論文執筆を優先した。そのため旅費にも次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、新たな物品の購入が必要な課題に取り組む予定である。また、学会発表も積極的に行うことにより、旅費も使用する予定である。
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