| 研究課題/領域番号 |
15K05802
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| 研究機関 | 大阪市立大学 |
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研究代表者 |
加藤 健司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10177438)
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| 研究分担者 |
脇本 辰郎 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10254385)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | ぬれ / 動的接触角 / 接触線 / 表面張力 |
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| 研究実績の概要 |
接触線が固体面上を有限速度で移動する際，接触角が速度に依存する動的ぬれ挙動について，実験，理論ならびに数値シミュレーションを用いた検討を行った．
実際の壁面における動的ぬれ挙動を模擬するため，周囲よりぬれやすい半円環状の欠陥が複数分布する壁面を通過する接触線の挙動を，数値シミュレーションから求めた．欠陥同士の距離や配置等の幾何学的パラメータを変化させ，種々の接触線の通過速度について数値計算を行った．その結果，上に凸の楕円状に欠陥が分布した場合，複数個の欠陥が恰も一つの大欠陥のように振る舞い，大きな接触線の変形が生じることを示した．このとき，欠陥の占める面積占有率は数%にも関らず，数°の有為な動的接触角の変化が生じることを示した．実際に観察される動的接触角の定性的なふるまいを，数値計算結果から説明することができた．系のエネルギー平衡条件に基づき，接触線の変形に伴う気液界面の変形エネルギー仕事を計算した．この仕事量の速度依存性が，実際に観察される巨視的接触角に大きな影響を及ぼすことを示した．
実際の壁面上での接触線の挙動について実験的に観察を行った．シリコンウェハー上に施したSAMs(Self-Assembled-Monolayers:自己組織化単分子膜)の一部をはぎとり，人工的に周囲よりぬれやすい直径200μmの円形欠陥を作成した．接触線の平均移動速度を数種類変化させ，欠陥上を移動する接触線の変形挙動，ならびにレーザー光の反射を利用して局所の接触角を同時測定した．その結果，欠陥に到達した接触線のトラップと変形，欠陥上での定常的な移動，ならびに欠陥からの離脱から変形回復に至る，スティックスリップ的な挙動を実験的に示すことができた．また，上記接触線の移動に伴う局所接触角の変化の測定結果から，実際に観察される動的接触角の振る舞いを明らかにすることができた．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度当初の研究実施計画においては，周囲よりぬれやすい一つの円形欠陥をもつ壁面上での接触線挙動を実験的に観測することを目的としていた．前年度には，欠陥を通過する接触線の挙動と接触角を計測できる実験装置ならびに方法の開発を行った．本年度はこの装置を用い，数種類の接触線の移動速度に対し，実際に接触線の変形ならびに局所の接触角を同時測定を行った．その結果，よく知られた接触線のスティックスリップ運動と，局所接触角との相関関係を定量的に明らかにすることができた．また，動的ぬれ挙動の数値シミュレーションにおいては，昨年度の単独欠陥に対する結果を発展させ，実際の壁面の状況に近いと思われる，複数個の欠陥が存在する場合について計算を行った．その結果，巨視的に観察される動的接触角と，接触線の変形仕事との関係を定性的に明らかにすることができた．
以上の結果から，壁面に存在する欠陥の動的ぬれ挙動に及ぼす影響について，実験，数値計算両面から概ね順調に進展していると判断できる．
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を踏まえ，複数個の欠陥群が存在する壁面上での接触線の挙動について，欠陥群の幾何学パラメータならびに接触線の移動速度をさらに変化させ，数値シミュレーションによる検討を進めていく．また，本研究で提案したエネルギー平衡条件式を用い，接触線変形に伴う気液界面積増加に伴う仕事量の，巨視的動的接触角への影響について，定量的な考察を行う．実際に観測される動的接触角の速度依存性を説明できるモデルの構築を試みる．
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