研究課題/領域番号 |
15K05803
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
辻 知宏 高知工科大学, システム工学群, 教授 (60309721)
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研究分担者 |
蝶野 成臣 高知工科大学, システム工学群, 教授 (20155328)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非ニュートン流体 / 液晶デバイス / アクチュエータ / 発電 |
研究実績の概要 |
本課題では,液晶材料の新規応用分野として期待される液晶アクチュエータおよび液晶発電デバイスに最適な液晶材料特性を明らかにするとともに,その液晶材料の合成および液晶アクチュエータおよび液晶発電デバイスの性能評価を行うことである.さらに,最適化された液晶アクチュエータおよび液晶発電デバイスの応用分野について提案を行う. この課題遂行のための一連の研究の内,平成28年度の計画は,1.液晶アクチュエータの駆動特性の評価,2.液晶発電機の分子動力学シミュレーションソフトウエアの開発および計算,3.分子動力学シミュレーションに基づき,液晶アクチュエータに最適な液晶材料設計の検討および液晶材料メーカーへの合成依頼である. 上記の計画に対して,平成27年度末に液晶材料メーカーより提供を受けた液晶サンプルを用い,液晶アクチュエータの駆動実験を行った.同時に,液晶アクチュエータ駆動についてのコンピュータシミュレーションを行い,液晶の物性値の違いが液晶アクチュエータの駆動特性に及ぼす影響を実験とシミュレーションの両面から検討した.その結果,液晶材料の物性値の内,ある特定の物性値が液晶アクチュエータの駆動特性に強く影響を及ぼすという知見を得た.その検討結果に基づいて,アクチュエータの駆動特性に最適な液晶物性値を有する液晶材料の合成を液晶材料メーカーに依頼した.合成された液晶材料を用いて,液晶アクチュエータの駆動実験を行ったところ,これまでの液晶材料を用いた液晶アクチュエータと比較して,格段の駆動性能の向上が見られ,液晶アクチュエータの実用化に向けて研究が大きく進展した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,平成28年度までに液晶アクチュエータに最適な液晶材料の物性値を明らかにするとともに,最適な物性値を持つ液晶を液晶材料メーカーに合成依頼した後,実際に液晶アクチュエータの駆動性能の向上が見られるかを調べることを中間達成目標として研究を行ってきた. コンピュータシミュレーションと液晶材料メーカーから提供された液晶サンプルを用いた実験により,液晶材料の代表的な物性値である誘電率,弾性係数,粘性係数の内,特に弾性係数と粘性係数が液晶アクチュエータの性能に大きく影響を及ぼすことを明らかにした.具体的には,弾性係数が大きく粘性係数が比較的小さい液晶材料の場合,電場印加および解放時における液晶分子の応答速度が向上し,結果として液晶アクチュエータの駆動性能の向上に貢献することが期待できる.液晶材料物性値に関する検討結果に基づいて,液晶材料の合成を液晶材料メーカーに依頼し,液晶アクチュエータを試作および駆動実験を行ったところ,従来比約2倍の駆動速度を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本課題では,液晶材料の新規応用として液晶アクチュエータおよび液晶発電デバイスの実用化を目的として,最適な液晶材料の開発のための指針を明らかにする.平成28年度までに,これら2種類の液晶応用の内,液晶アクチュエータについては,最適な液晶材料の指針および駆動実験での性能向上を明らかにした.平成29年度は,液晶発電デバイスに最適な液晶材料物性値を明らかにするとともに,液晶発電デバイスの発電性能向上を目指す.現在,液晶発電に関する実験およびコンピュータシミュレーションが進行中であり,それらのデータ収集後,発電に最適な液晶材料の検討と液晶材料メーカーへの合成依頼を行う.その後,新規液晶材料を用いた液晶発電デバイスの性能評価を行うとともに,本課題の成果についての産業界への発信を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
液晶メーカーへの液晶材料の合成依頼を行ったところ,液晶材料のサンプルを少量ずつ数種類について無償提供いただくことができた.それらのサンプルを利用して液晶アクチュエータの試作実験を行ったところ,本年度に予定していた液晶アクチュエータ性能の向上が不足なく達成できた.そのため,本年度に予定していた液晶材料の購入予定分を次年度に繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において,様々な条件下での液晶アクチュエータの性能評価を行うため,サンプル提供を受けた液晶材料の十分な量の確保が必要であり,液晶材料の購入費用に充てる.
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