研究課題
超音速噴流の構造を定量的に調べることは,学問的にも工学的にも非常に重要なため,これまで多くの実験的及び理論的研究が行われている.その結果,超音速噴流の圧力場についてはある程度明らかになっているが,密度場の詳細については不明な点が多い.従来より,衝撃波を含む密度場を定量的に光学観察する手法として,背景シュリーレン法,フォーカシングシュリーレン法,モアレシュリーレン法,レインボーシュリーレン偏向法が利用されているが,その中でもレインボーシュリーレン偏向法は,最も空間分解が高く,密度の計測値の精度も非常に高い.しかし,レインボーシュリーレン偏向法を発展させて超音速噴流の三次元密度場を光学的に定量計測した例は,国内のみならず国外においても全くない.そこで本研究では,レインボーシュリーレン偏向法にコンピュータートモグラフィを組み合わせて,超音速噴流の三次元密度場の計測が可能な全く新しい光学計測法(レインボーシュリーレン断層撮影法)を確立した.まず本研究では,レインボーシュリーレン断層撮影法による密度再構成の妥当性を定量的に評価するために,軸対称先細ノズルからの不足膨張噴流に対してレインボーシュリーレン偏向法を適用し,従来のアーベル変換法を用いた密度再構成とレインボーシュリーレン断層撮影法による密度再構成の定量的比較を行った.その結果,両手法による密度の計測値は,定量的にほぼ一致することがわかった.次に,軸対称先細ノズルからの不足膨張噴流に対して,k-wSST乱流モデルを用いたRANSシミュレーションを行い,数値計算による密度の計算値をレインボーシュリーレン断層撮影法による密度の計測値と定量的に比較した結果,両者による噴流内の密度の値は定量的に良く一致することが分かった.
2: おおむね順調に進展している
本研究では,衝撃波を伴う噴流内の密度場を三次元で光学的かつ定量的に計測する手法を確立できた.また,三次元数値計算コードの開発も行い,本計測値と定量的に良く一致することを明らかにした.さらに,比較的弱い衝撃波を伴う軸対称および矩形先細ノズルからの噴流に対して,従来の信頼性のある理論解析を行い,本計測手法と数値計算および理論解析による密度の値を比較した結果,三者は定量的に良く一致することがわかった.以上の結果,本計測手法の妥当性が明らかになった.
平成28年度は,本計測手法の妥当性をさらに検証するために,設計マッハ数1.5の軸対称および矩形の超音速ノズルからの衝撃波を含む流れ場に対してレインボーシュリーレン断層撮影法と三次元数値計算および理論解析を適用し,三者を定量的に比較検討する予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Thermal Science
巻: 25 ページ: 78-83
10.1007/s11630-016-0836-0