研究課題
超音速噴流は,航空宇宙産業,鉄鋼業,繊維業,農業等のさまざまな分野で幅広く利用されており,その内部構造を調べることは学術的および工学的に非常に価値がある.近年,コンピュータの発達により,超音速噴流の流れ場をCFDを用いて数値的に解く試みもされているが,数値計算の実験的検証の多くは,シャドウグラフ法やシュリーレン法による可視化結果との定性的比較や噴流の中心軸上のピトー管による圧力値との比較に留まっている.本研究では,レインボーシュリーレン偏向法にX線撮影などでよく利用されるCTの原理を組み合わせることで,超音速噴流の三次元の密度場を計測可能なシステムの開発を行った.平成28年度の研究結果を要約すると以下のようになる.1.設計マッハ数が1.5の軸対称超音速ノズルからの噴流の密度場を計測し,アーベル変換とCTの原理に基づく密度場の再構成を行った結果,両者が定量的によく一致することを示した.また,両者による計測値は,不足膨張の程度が弱い場合に信頼性のある微小変動理論値とも定量的によく一致することを示した.2.設計マッハ数が1.5の正方形断面の超音速ノズルからの噴流の密度場を計測し,CTの原理に基づく密度場の再構成を行い,不足膨張の程度が弱い場合に信頼性のある微小変動理論値と比較した結果,両者が定量的によく一致することを示した.また,噴流からの密度場は,噴流軸に垂直な断面の等密度線の形状が,流れ方向に四角形からひし形に変形し軸対称へと変化する複雑な三次元の密度場となっていることを実験的に明らかにした.3.上記1と2の超音速噴流の密度場をRANSシミュレーションによって,再現した.
2: おおむね順調に進展している
28年度の研究によって,当初の目標通りノズル出口で軸対称と正方形断面をもつ先細ノズルからの不足膨張噴流とノズル出口で軸対称と正方形断面をもつ設計マッハ数1.5のラバルノズルからの不足膨張噴流の三次元密度場を計測可能なシステムの開発に成功した.
平成28年度の実験と数値計算によって,正方形断面をもつノズルからの不足膨張超音速噴流の密度場は,噴流軸に垂直な断面の等密度線の形状が,流れ方向に四角形からひし形に変形し軸対称へと変化する複雑な構造となっていることを示した.この現象を超音速噴流の密度場計測で明らかにしたのは世界で初めてである.平成29年度は,ノズル出口の断面がアスペクト比4の長方形断面の場合の衝撃波を伴う噴流の三次元構造を実験的および数値計算によって明らかにする予定である.また,平成28年度の研究結果を国内および国外の学術論文誌等で公表する予定である.
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Journal of Flow Control, Measurements & Visualization
巻: 5 ページ: 36-50
10.4236/jfcmv.2017.52003