超音速噴流は,航空宇宙産業,鉄鋼業,繊維業,農業等のさまざまな分野で幅広く利用されており,その内部構造を調べることは学術的および工学的に非常に価値がある.近年,コンピュータの発達により,超音速噴流の流れ場をCFDを用いて数値的に解く試みもされているが,数値計算の実験的検証の多くは,シャドウグラフ法やシュリーレン法による流れ場の可視化結果との定性的比較や噴流の中心軸上のピトー管による圧力値との比較に留まっている.本研究では,レインボーシュリーレン法にX線撮影などでよく利用されるCTの原理を組合わせることで,超音速噴流の三次元密度場を計測可能なシステムの開発を行った.平成29年度の研究成果を要約すると以下のようになる. 1.設計マッハ数が1.5でノズル出口が10mm×10mmの正方形断面をもつ矩形超音速ノズルからの過膨張噴流の3次元の密度場計測に世界で初めて成功した.また,過膨張噴流の内部に発生するマッハディスク前後の密度の計測値と理論値は,定量的に良く一致することがわかった.実験と同じ条件の基で, k-ωSST乱流モデルを用いた3次元圧縮性 RANSシミュレーションを行い,レインボーシュリーレン法による密度場を用いて検証した.その結果,矩形超音速ノズルからの自由噴流のショックセル構造の空間的変化が詳細に明らかになった. 2.ノズル出口が5mm×20mmの長方形断面をもつ長方形先細ノズルからの不足膨張音速噴流の構造を実験と数値計算によって調べた.その結果,噴流の中心軸を含む密度場に対して,短軸断面と長軸断面に現れるマッハ衝撃波の空間的構造を定量的に明らかにした.
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