本年度は,数学的に不適切であるとされているLyczkowskiらが調べた二流体モデル方程式において,ガリレイ変換に対して不変ではない付加慣性力の式をガリレイ変換に対して不変なそれに置き換えた場合の二流体モデル方程式の数学的適切性を調べ,(1)どちらの付加慣性力の式を用いても固有方程式は固有値 の四次方程式となること,(2)気液の流速が等しい場合には4つの固有値が陽的に求められること,(3)気液の流速が等しい場合,Lyczkowskiらが用いたガリレイ変換に対して不変でない付加慣性力の式では,大気圧条件下の水-空気系でも,高圧条件下の水-水蒸気系でも,すべての固有値が実数となり数学的に適切となる一方で,Eamesらが導出したガリレイ変換に対して不変な付加慣性力の式では,大気圧条件下の水-空気系ではあらゆるボイド率に対してすべての固有値が実数となり数学的に適切となるが,高圧条件下の水-水蒸気系ではボイド率が0.1以上で固有値が実数にならない領域があり,数学的に不適切なボイド率の範囲があること,(4)一様流速は数学的適切性に影響を及ぼさないことが明らかになった. これらのことは,付加慣性力の式をガリレイ変換に対して不変でない式から,ガリレイ変換に対して不変な式に修正しただけでは,二流体モデル方程式の数学的適切性を適切にすることはできないことを意味している.これらの成果に関する論文は福岡工業大学エレクトロニクス研究所所報第34巻に掲載されている. また,二流体モデル方程式に気泡が並進運動する場合の気液相変化も組み込むため,それらの理論と計算も行ったが,これはまだ途中の段階である.
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