近年,化学やバイオなどの分野においてμTAS (Micro Total Analysis Systems) と呼ばれる超小型・化学分析装置の開発が注目されている.この装置はさまざまなマイクロ流体デバイスやセンサなどから構成され,混合,反応,分離や抽出などの一連の操作を行う.しかし,流路はマイクロサイズであるため,その流れは低レイノルズ数の層流となり乱流による物理的混合が期待できない.そのため,低レイノルズ数流れにおいて効率よく混合促進可能なマイクロミキサが必要とされている.そこで研究代表者らは,曲がり流路内流であるディーン流れと同軸回転二重円筒内流であるテイラー流れを組み合わせたテイラー・ディーン流れを利用したカオス混合によって混合の促進を図るマイクロミキサを提案している.本研究課題の最終目標は,テイラー・ディーン流れを利用したカオス混合の混合促進メカニズムを明らかにし,混合が促進される条件を見出すことである.平成27年度から平成29年度において3次元カオス流れ場の時間発展をPIV(速度)およびLIF(境界面の引き伸ばしと折り畳み)によって同時計測し,さらに有限体積法と粒子法によるCFD結果を用いることで,カオス混合の混合促進メカニズムを明らかにし,混合が促進される条件を検討した.その結果,以下の知見が得られた. [1] 主流の逆流が発生し,その逆流による二次流れと主流による二次流れが組み合わせられることで混合は促進される. [2] 曲がり流路出口からの主流の逆流が循環流となることで混合は促進される. [3] 流路断面のアスペクト比が増加すると,逆流の速度と発生範囲も増加するため混合は促進される. [4] 流路断面の上壁面と内壁面を移動壁面とする場合,混合過程において2液界面の変形が複雑になり混合は促進される.
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