研究課題/領域番号 |
15K05815
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
秦 隆志 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (00342577)
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研究分担者 |
西内 悠祐 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (00455172)
多田 佳織 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 講師 (10611775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノバブル / 存在評価 / 超音波 / ラジカル / ソノルミネッセンス |
研究実績の概要 |
平成27年度は、有機物を含んだマイクロ・ナノバブル水に超音波を印可することで増強される有機物分解挙動の観測系の構築と共に、それを用いたマイクロ・ナノバブルの存在検証をおこなった。結果としては、対象有機物としたメチレンブルーの分解(脱色)挙動から、この観測系によるマイクロ・ナノバブルの存在評価の可能性を確認した。 次いで平成28年度では、このメチレンブルーの分解が超音波によるマイクロ・ナノバブルの破壊によって生じるラジカルが寄与したとする推察の元、同実験系においてメチレンブルーに代わってヨウ化カリウムを加えた実験をおこない、吸光度のスペクトルを確認した。結果、355nm付近にOHラジカル特有のピークが観測された。なお、超音波だけでもOHラジカルが発生することは既知であるが、今回の実験系では短時間での印可でありバブル処理前の水への超音波印可ではOHラジカルが発生しないことは確認している。更に、マイクロ・ナノバブルの存在量に従って、このピーク長は高低した。つまり、平成27年度でのメチレンブルーの脱色挙動は超音波によるマイクロ・ナノバブルの破壊から生じたOHラジカルによることと、これらのスペクトルの差分を取ることでマイクロ・ナノバブルの存在、並びにその高低評価からマイクロ・ナノバブルの存在量に対する尺度としての利用性を確認した。 また、対象有機物にフェノールを用いたところ、バブル処理前の水では超音波によるキャビテーションで印可時間に依存した一様な分解挙動が見られた一方、マイクロ・ナノバブル水では超音波印可直後で大きな分解挙動を示した後、先と同じ一様な分解挙動が観測された。マイクロ・ナノバブル系での大きな分解挙動はそこに存在するマイクロ・ナノバブルの破壊に寄与するものであり、この差異からのマイクロ・ナノバブルの存在が評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(研究計画) ① 現在、マイクロ・ナノバブル研究でバブル量を測定できるとして認識されている測定機を用いて、超音波の周波数・出力を種々に変え、処理前後のマイクロ・ナノバブル数を計測し評価する。目標点は、超音波によってマイクロ・ナノバブルの崩壊現象のみ、あるいは処理後残存するマイクロ・ナノバブル数が最小となる条件の把握とする(つまり、マイクロ・ナノバブルが消滅、消滅度が最高となる条件の探索)。 ② 上記①の条件で、ESR測定やメチレンブルー等の脱色評価から発生するラジカル量を定量化し、その際に崩壊するマイクロ・ナノバブル数と発生するラジカル量との間で相関関係を調査する。本事項では、その相関関係を用い、発生したラジカル量から崩壊したマイクロ・ナノバブル数を見積もることを目標点とする。 ③ マイクロ・ナノバブルと超音波を併用した有機物分解系として、例えばフェノールの分解挙動を追跡し、崩壊するマイクロ・ナノバブル数とフェノールの分解量との間で相関関係を調査する。本事項では、その相関関係を用い、分解された有機物量から崩壊したマイクロ・ナノバブル数を見積もることを目標点とする。 (平成27年度状況)クリーンな環境下での実験系の確立と測定における基準の選定を決定した。また、超音波周波数28kHzと45kHzのデータの蓄積(①)と共にメチレンブルーを添加したマイクロ・ナノバブルにおいて超音波を併用した脱色挙動の観測(②)をおこなった。この脱色挙動は単純な飽和酸素水では観測されず、マイクロ・ナノバブルの存在が関係していると推測される。また、脱色の程度が超音波印可によって破壊されたバブル数と相関性を示す可能性を確認した。 (平成28年度状況)対象有機物にフェノールを用いて、マイクロ・ナノバブルと超音波併用での分解挙動を確認し、その程度の差異がマイクロ・ナノバブル数の影響を受けることを確認した(③)。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、「現在までの進捗状況」の補充をおこないつつ、より利用の実現場を意識して平成28年度に実施したフェノール以外の有機物についてもマイクロ・ナノバブルと超音波併用での分解挙動を観測し、その程度の差異がマイクロ・ナノバブル数に寄与するかなどを検証する。また、これまでの研究成果を整理し、本研究課題「マイクロ・ナノバブルの存在について、超音波処理によってバブルの崩壊現象で発生するラジカルから評価できるかどうかの可能性の検証」の総括をおこなう。 更に、発生するラジカルの評価としてソノルミネッセンスや、より簡易な手法を用いた評価、あるいはラジカル以外でのマイクロ・ナノバブルの存在評価手法への発展的継続を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入価格が予定よりも若干安く納入されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に関係する物品および学会発表等の旅費に支出予定。
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