研究課題/領域番号 |
15K05816
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
尾形 公一郎 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (50370028)
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研究分担者 |
佐野 博昭 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 教授 (50187275)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 廃石膏ボード / 二水石膏 / 半水石膏 / 乾燥 / 粒子径 / 有効熱伝導率 / 粒子レイノルズ数 / 熱流束 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は廃石膏ボードから生成される二水石膏が半水石膏へ変化する際の加熱脱水メカニズムを明らかにすることである.平成28年度は,平成27年度に粒子径を3種類に篩い分けした二水石膏を用いて,充てん質量,加熱温度,加熱時間,熱流束を変化させた条件での加熱透過実験を引き続き行い,二水石膏の半水石膏への変化に及ぼす熱流動の分析を行った.その結果から得られた主な成果は次の通りである.(1)流れを伴う粒子充てん層の有効熱伝導率の推定を行った結果,粒子充てん層の有効熱伝導率は粒子レイノルズ数の増加とともに増加することが明らかとなった.また,有効熱伝導率は粒子径の増加とともにその値が高くなることが分かった.(2)粒子充てん層の上部と底部の加熱温度測定結果とフーリエの法則を用いて熱流束を推定した結果,熱流束が高いものほど加熱透過試験の半水化時間が短くなることと対応しており,粒子充てん層内の熱移動が乾燥特性に影響していると推測できた. さらに,平成28年度は粒子径を5種類に篩分けした二水石膏を用いて,充てん質量や加熱温度が一定条件で熱流束のみを変化させた場合の乾燥特性の調査を行い,次の成果が得られた.(1)熱風発生機の周波数と粒子径,充てん質量を調整することで,粒子充てん層に与える熱流束や粒子レイノルズ数を変化させた実験を可能とした.(2)粒子充てん層の上部と底部の時系列温度測定結果から,充てん層上下で温度差が生じることが明らかとなった.また,乾燥時間の増加とともに温度差が見られなくなることが確認され,この温度差が二水石膏から半水石膏へと変化する熱流動を示していることが分かった. 以上の成果は,二水石膏から半水石膏へ変化する加熱脱水特性の概ね明らかにできており,工業的に有効な知見が得られたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は廃石膏ボードから生成される二水石膏が半水石膏へ変化する加熱脱水メカニズムの詳細を明らかにすることである.平成28年度の計画では,二水石膏の粒子径を3種類から5種類に増加させた条件で,加熱透過試験および恒温加熱炉による半水石膏転換条件の調査を行う予定であった.現在までの進歩状況は以下の通りである. (1)廃石膏ボード由来二水石膏を振動ふるい機で調整して,WS1(75~125μm),WS2(125~250μm),WS3(250~425μm),WS4(425~850μm),WS5(850~2000μm)の5種類の粒子径に分類した. (2)粒子径の異なる3種類の二水石膏を用いて,平成27年度と同一条件下で加熱透過試験を行い,粒子層上部と底部の温度を熱電対で追加測定した.その結果,前年度の結果と併せて管内レイノルズ数,粒子レイノルズ数や熱流束を求めることが可能となり,これらのパラメータが石膏の熱流動に及ぼす影響を調査・分析した. (3)充てん部の入り口,内部,出口部温度の時系列データと圧力,空気速度が測定可能な加熱透過試験部を新たに製作した.ここで,測定には熱電対,圧力センサ,熱線流速計を使用した.装置製作後に,5種類の二水石膏を用いて充てん質量や加熱温度が一定条件で熱流束のみを変化させた場合の加熱透過試験を行った.その結果,粒子充てん層上下で温度差が生じ,乾燥時間の増加とともに温度差が見られなくなる熱流動を確認することができた. (4)一方で,加熱透過試験の製作および熱流束一定の実験条件の調整に多くの時間が必要となったため,5種類の二水石膏と同一条件下での恒温乾燥炉実験については,今後,実験を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27~28年度に得られた結果を基にした今後の研究の推進方策は以下の通りである. (1)平成27~28年度の追加実験および平成27~28年度と同一の充てん質量,加熱温度で粒子径分布のみを変化させた場合の加熱実験を行い,二水石膏が半水石膏へ転換する条件を明らかにする. (2)平成28年度に実施した,5種類の二水石膏を用いて充てん質量や加熱温度が一定条件で熱流束のみを変化させた場合の加熱透過試験のデータ分析を行い,石膏内部の熱流動と乾燥特性の関係を明らかにする.また,恒温加熱炉と加熱透過試験装置を用いた場合の二水石膏から半水石膏へ転換する最適加熱条件を明らかにし,既報の結果との差異を明確にする.さらに,恒温加熱炉と加熱透過試験による二水石膏の半水石膏転換条件を比較して二水石膏の加熱脱水特性に及ぼす加熱空気流や粒子充てん層内の熱流動の影響を明らかにする. (3)石膏の乾燥に及ぼす熱流動の影響を理解するために,赤外線サーモカメラや熱電対による温度測定,透過空気速度や圧力測定結果の分析や,粒子充てん層内の有効熱伝導率,粒子レイノルズ数,粒子充てん層内部の熱流束の推定を行う.また,二水石膏を加熱した際の表面温度・内部温度・圧力・空気速度などの測定結果を分析し,材料の水分量変化・熱流動・熱伝導理論を基に,二水石膏から半水石膏へ転換する際の加熱脱水メカニズムを解明する.さらに,石膏の成分を明らかにするためにX線回折装置を用いた定量分析を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用額が生じた理由は,(1)本研究課題の成果を論文投稿する際の論文データ(CDデータ)の郵送料として使用予定であった.(2)本校事務に論文データ郵送料の支出を確認したところ,本経費で論文データ郵送料の支出ができないと回答があった.(3)論文掲載時期が年度末で残金の使用が困難であったためです. 以上の理由によって,次年度使用額が生じました.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については,今年度請求した助成金と併せて,物品費などとして使用する計画である.
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