研究課題/領域番号 |
15K05817
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
松山 新吾 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究員 (60392841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スカラー混合 / 平面乱流噴流 / 乱流 / DNS |
研究実績の概要 |
本研究では、DNS および高解像度の陰的 LES によりスカラー混合を伴う乱流噴流の解析を行い、高レイノルズ数(Re)条件において微細スケールの乱流スカラー混合がマクロな混合過程に果たす役割を明らかにしようとするものである。 平成 27 年度では、最初に Re = 3000 の条件について平面乱流噴流の DNS を実施し、解析精度の検証を行った。空間高次精度スキームを 3 次から 9 次精度まで変化させ、それぞれのスキームが解像出来る最小スケールを評価した結果、Re = 3000 の条件においては 5 次精度以上のスキームであれば、微細スケールの乱流が数値粘性によって減衰することなく高精度に解像出来ることが示された。また、空間精度に応じて解像出来る最小スケールが変化することから、補間スキームの精度を変化させることは空間フィルターのサイズを変化させることに相当していることが示された。 さらに次のステップとして、Re = 10000 の条件に対して約 2.4 億点の計算格子を用いて DNS を実施した。ここでも空間高次精度スキームを 3 ~ 9 次精度まで変化させて解析を実施し、平均スカラー分布および RMS 変動などのマクロな統計量に与える影響を評価した。得られた結果より、0.5 mm(噴流幅 1 mm に対して 1/2 のスケール)までの乱流を捉えていれば(最も高精度である)9 次精度の DNS と同じ平均場と RMS 変動が得られるということが示された。以上の事実より Re = 10000 の条件においては、マクロな混合過程に寄与しているのは 0.5 mm までのスケールの乱流であり、それ以下の微細スケールは寄与していないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画として挙げた Re = 3000 の平面乱流噴流に対する DNS、および、空間高次精度スキームの検証は計画通りに実施することが出来た。特に、空間高次精度スキームを 3 次から 9 次精度まで変化させて解析精度を評価したことで、それぞれの補間スキームが持つ性能(格子幅に対して何倍のスケールの乱流を解像出来るかなど)を明らかにすることが出来た。 さらに、当初の計画に挙げた次のステップとして、Re = 10000 の条件に対する DNS についても解析を成功裏に実施し、微細スケールの乱流によるマクロなスカラー混合への寄与を定量的に評価することが出来た。ここで得られた成果は、今後、DNS および LES を実施する上でどの程度のスケールの乱流を解像するべきかについて指針を与える知見となることが期待できる。 以上の成果から、平成 27 年度は当初の計画通りの目標を全て達成したものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成 27 年度の研究を通して、空間高次精度スキームの検証を完了した。また、平均場・RMS 変動などのマクロな統計量の比較によって高レイノルズ数乱流噴流における微細スケール混合の寄与を定量的に評価する手法が確立できた。これらの成果を踏まえた平成 28 年度以降の方針として、さらに高いレイノルズ数の条件 Re = 30000 まで解析を実施して微細スケール混合の寄与を明らかにすることを目指す。また、DNS の結果を利用して SGS フラックス、および、乱流 kinetic energy の収支を評価することで、微細スケール混合の寄与を解析的に評価することを目指す。マクロな統計量の比較による簡易的な評価手法と合わせて、高レイノルズ数乱流噴流において微細スケール混合が果たす役割を明らかにする。
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