昨年度は,①パルスの長さで電子に与えるエネルギーの量を変える,②パルスを打つタイミングおよびパルス間隔を変えることで生成されるラジカルの作用を変える,2つの試験を行い,生成されるラジカルの作用を変えられるという仮定の検証を試みた.この結果,タイミングについては,燃焼特性に大きな変化が見られないことが分かった.パルス間隔に関し,異なる周波数で試したところ,燃焼期間が短くなる最適な周波数があることが分かった.熱発生率の変化を見ると,燃焼前半では従来点火方式と比べて変化が見られないが,後半では燃焼の加速が見られた. 本年度は,dV/dtの影響を調査した.新電源にて希薄燃焼限界を拡大できるかどうかを調査した.パルス幅は200ns,印加電圧を24kV(ギャップ間電圧20.4kV)とした.λ=1.5における燃焼では連続500サイクル分のデータを取得し,その平均値を求めた.パルス幅,電圧の変化により放電のエネルギーは大きく変化しているが燃焼変動や着火遅れ,燃焼期間,熱効率および熱発生率に大きな差は見られなかった.また,CIC,IES電源との比較を行ったところ,IESと比べIMEPや変動率に差は見られないが,着火遅れ,燃焼期間ともに短くなり,冷却損失,排気損失が減少し1ポイント程度の図示効率の向上が見られた.次にλ=1.6における燃焼解析を行ったところ,λ=1.5同様に放電のエネルギーによる燃焼の変化は見られなかった. 以上より低温プラズマ点火において放電のエネルギーは燃焼には影響しないと考えられる.また,新電源ではIESに比べ熱発生率ピークが高く,点火時期,等NOx排出量基準ともに図示熱効率で1.5ポイントの向上が見られた.つまり,運転範囲は広がるが,リーン限界性能に関しては大きな変化が見られないことが分かった.
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