研究実績の概要 |
人工衛星の姿勢制御用スラスタ燃料の一つとして知られる非対称ジメチルヒドラジン(UDMH, (CH3)2NNH2)の熱解離素過程を量子化学計算により探索した.得られた結果を基にRRKM理論,支配方程式解析による反応経路毎の速度定数の理論計算を行ったところ,主反応経路はN-N結合, N-C結合が単純解離しCH3NCH3 + NH2, CH3NNH2 + CH3が生成する経路であることが明らかになった.この結果はモノメチルヒドラジン(MMH, CH3NHNH2)と同じ傾向であった. UDMHの熱分解反応機構における主要後続反応と考えられるUDMH + CH3, UDMH + NH2, UDMH + H反応について,量子化学計算と遷移状態理論により反応速度定数の理論計算を行った.本課題で得られた速度パラメータと,MMH,ジメチルアミン (NH(CH3)2)熱分解反応モデルを組み合わせ,UDMH熱分解反応モデルを新たに構築した. 構築した反応モデルと既往の流通式反応器,衝撃波管による実験結果(温度750-1400 K, 濃度0.09-5%)を比較した.本モデルは総括熱分解反応速度定数の絶対値を一桁程度過小評価するが,速度定数の温度依存,UDMH濃度依存について実験値を良く再現することが明らかとなった.本モデルの反応解析により低温,高濃度条件において主にUDMH + CH3反応により総括のUDMH消費速度が促進されることが明らかとなった.
|