研究課題/領域番号 |
15K05823
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
北村 健三 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命教授 (20126931)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 対流伝熱 / 自然対流 / 分散熱源 / 熱交換器 / ヒートシンク |
研究実績の概要 |
平成29年度は、水平加熱円柱を一定な水平および垂直方向間隔Gh, Gvで格子状に配列した円柱群(チューブバンク)について、バンク内に生じる自然対流の流動と伝熱を流れの可視化および伝熱実験により探った。実験は常温の空気を対象とし、試験円柱には直径の異なる2種類の円柱(d=8.4,14.4mm)を用い、円柱の水平および垂直方向間隔をGh=10.6-30.6mm、Gv=5.6-30.6mmの範囲で変化させた。実験は、主として水平方向の円柱本数を10本、垂直方向の円柱段数を5段とした場合について行った。まず、バンク内の流動を煙により可視化してみた。その結果、煙は鉛直上方でなく、バンクの垂直中心線に向かって寄り集まる現象が観察された。また、この流れの寄り集まりによって、バンク内に設置された水平円柱列のヌセルト数はバンクの下流側に向かって低下していくこと、また同じ水平円柱列内では、列中央付近で低く、外側に向かって増加する下に凸の分布を示すことが分かった。さらに、これら各円柱列の中心付近に設置された円柱のヌセルト数を各種の無次元パラメータを用いて整理したところ、バンク最下段円柱列では、垂直方向の円柱間隔Gvを代表長さにとったヌセルト数NuGvが、パラメータ[RaGv*(Gv/d)^2]で、また、バンク2段目から5段目に設置された円柱列では、パラメータ[RaGv*(Gv/d)(Gh/d)]で整理できることが分かった。ここで、RaGv*はGvを代表長さとする修正レイリー数、(Gh/d)および(Gv/d) は、円柱間隔Gv, Ghと円柱直径dとの比である。なお、これらの研究成果をまとめて、日本機械学会論文集に出版・公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では、複数段・複数列配置された熱源まわりの自然対流の伝熱特性を支配する無次元パラメータを明らかにし、各熱源の伝熱量や温度を定量的かつ広い範囲で予測する相関式を提案することを最終的な目標としている。平成29年度は、チューブバンク型熱交換器やピンフィン型ヒートシンクなどの伝熱機器で採用されている、多数の加熱円柱が水平および垂直両方向に格子状に配置した体系における伝熱特性を実験により調べ、その伝熱を支配するパラメータを明らかにすると共に、円柱の直径や加熱量、水平および垂直方向の円柱間隔の影響を考慮した伝熱相関式を提案することができた。この相関式は、熱交換器やヒートシンクなど様々な伝熱機器の熱設計や伝熱性能の向上に有益な情報を提供するものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を踏まえ、平成30年度は水平加熱円柱を千鳥状に配列した体系について、流れの可視化および伝熱実験を遂行し、その成果をまとめて論文として公表する計画である。なお、この千鳥配列チューブバンクについては、すでに昨年度中に可視化実験を終え、伝熱実験についても主要な実験データを取り終えている。平成30年度は、これらのデータを基に無次元整理を試みる予定であり、とくに昨年度格子配列チューブバンクで明らかにした無次元パラメータで同様に整理可能か否か調べる。現時点で、千鳥配列バンクの2段目以降に設置された円柱列のヌセルト数は格子配列バンクのそれより高い値が得られており、両者の伝熱相関式を比較することにより、熱源の配置により伝熱性能の向上がどの程度図れるか明らかにする。 さらに、本年度は本申請課題の最終年度に当たることから、昨年度までに実施した幾つかの実験、とくに垂直な加熱平板を水平方向に一定な間隔で配置した体系について、伝熱実験データを整理したところ、平板列の伝熱が円柱列とほぼ同じ無次元パラメータで整理可能なことを確認している。そこで、これら結果をまとめて論文として公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は平成29年度までに主要な実験データをほぼ取り終えているものの、とくに平成29年度後半に実施した千鳥配列チューブバンクの伝熱実験については、データを整理する過程で、幾つか実験データを追加で取得する必要性を感じている。このため平成30年度は追加実験を実施する計画であり、実験に当たって消耗品類等の購入費用を必要としている。さらに、この実験および前年度までに実施した実験により得られた成果をまとめて学会発表を行うと共に、査読付き論文として出版・公表することを予定しており、このための旅費および論文掲載料を必要としている。
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