最終年度は,前年度までに構築した装置を用いて,旋盤作業時に排出される切削油を含むアルミニウム系切削屑を原料として,油分脱脂能力と省エネルギー処理の効果を分析評価した.とくに最終年度には,原料の加熱処理温度(蒸気温度)の変更に加えて,蒸気循環流量と加熱処理時間の影響に着目し,これらをパラメータとして,脱脂能力と消費電力の評価を行い,消費エネルギーを踏まえた高温処理の有効性を定量的に示した. 本研究期間全体においては,処理蒸気温度を350,400,450および500℃クラスに,蒸気循環量を27~60 m3/hクラス,処理時間を6,12分に設定して,これらが脱脂能力と消費電力に与える影響を評価した.従来の過熱水蒸気による処理温度は,350℃程度またはそれ以下のものが多い中,原料の溶解を考慮に入れた高温処理を行った.期間全体の成果として,処理温度350℃程度では,蒸気流量や加熱処理時間により,目標とする脱脂処理後の油分付着率1%以下を達成できない場合も生じたが,処理温度を上昇することにより,他の稼働条件に大きく支配されること無く目標の油分付着率を達成できることを示した.とくに処理温度では,アルミニウム系切削屑の溶解との兼ね合いから,400~500℃で目的の脱脂能力を達成することができ,高温化処理の有効性を示すことができた.また,省エネルギー処理の観点からは,投入エネルギーを減少できる処理温度400℃程度が望ましいことを示した. 本実験対象がアルミニウム系切削屑であったため,更なる高温処理では一部金属の溶融が生じたが,本研究で提案する蒸気循環システムによる処理方法は,より溶解温度の高い金属処理に対しても適用できるものと期待できる.
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