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2016 年度 実施状況報告書

擬2次元流体相変化メカニズムの解明とミクロスケールの間隙洗浄技術への応用

研究課題

研究課題/領域番号 15K05826
研究機関京都大学

研究代表者

松本 充弘  京都大学, 工学研究科, 准教授 (10229578)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード流体相変化 / 蒸発 / 沸騰 / パターン形成 / マイクロスケール流れ
研究実績の概要

変圧器に用いられる積層鋼板間に入り込んだ絶縁油除去の有力な方法である高温・減圧条件での蒸気洗浄技術のメカニズムの解明を目的として,平板間隙の液体が減圧下で示す,流動や蒸発/沸騰現象を定量的に調べている.本課題研究の2年目となる本年は,昨年度までに作成した実験装置を用いて,さまざまな条件での可視化実験を行い,データを集積した.主な結果は以下の通りである:
(1) 実験装置の改良:加熱した溶剤蒸気を減圧装置に導入することで、高温下での実験観察を可能とした.
(2) 板のたわみによる間隙距離の変動の検討:板の厚さを変えることで相変化時の間隙距離の変動の影響を調べた.
(3) 試料液体の検討:これまでの試料である水,エタノールに加えて,アセトンとヘプタン,グリセロールについても同様の実験を行い,蒸気圧,濡れ性,粘性などが相変化挙動に大きな影響を与えることを見出した.
これらの成果は、国際会議での口頭発表や学術論文2報において公開した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度までに構築した真空チャンバー系を改良し,チャンバー内圧力の制御や気体加熱装置などの導入などにより,温度と圧力をある精度でコントロールした実験が行えるようになった.これは,本研究の目的にとって大きな進歩である.
間隙中の流体相変化挙動に大きな影響を与える可能性がある主な因子として,我々は,(1) 温度, (2) 圧力, (3) 表面粗さ,(4) 間隙の大きさ の4つを想定しており,本年度は,(1) と (4) の検討に重点を置いて研究を進めた.
温度因子については,当然ながら高温ほど飽和蒸気圧が高いために蒸発速度が大きいが,最も蒸気圧の低いグリセロールを蒸発させるまでの高温をうまく得ることができていない.グリセロールは絶縁油のよいモデル物質であるため,今後,温度制御法をさらに改良して現実系に近い実験を行うことを計画している.
間隙の大きさは,現状では表面粗さと独立に制御することが困難であるが,国際会議における本研究の発表において,減圧下で板のたわみに由来する間隙の変形の重要性が指摘されたため,板厚を大きくすることでたわみを減らした実験を行い,たわみが蒸発速度に影響を与えることを定量的に検討した.

今後の研究の推進方策

本課題研究の最終年度となる次年度は,実験装置のさらなる改良を行いつつ,間隙内流体相変化のモデリングを進める予定である.
実験としては,より高温で安定な温度制御ができるようにすることを検討している.また,PIV手法を用いて,間隙内の液体の流れ計測を行うことを計画しているが,本研究での間隙距離が30マイクロメートル程度と小さいために,PIV法の適用の可否をテスト系により検討することから始める.
モデリングとしては,(1) 枝分かれパターンの形成メカニズム と (2) 突沸現象による蒸発促進 の2つを明らかにできるようなモデルが必要である.
(1) については,パターンとしてはviscous fingeringに類似しているが,試料液体が低粘性であることなどから,表面粗さに起因したピン止め効果など別の要因も検討しなければならない.(2) については,突沸の頻度がいろいろな実験因子にどのように依存するかという観点から実験データを再整理した上で,物理的にも妥当なモデルを構築することを目指す.

次年度使用額が生じた理由

実験に使用する試料(各種溶剤,ガラス板)の使用量が当初の予定よりもやや少なかったため,消耗品費に残額が生じたことによる.

次年度使用額の使用計画

次年度の請求分とあわせて,新たに計画しているPIV計測用の試料(各種溶剤や蛍光微粒子溶液)の購入に充てる予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Quasi Two-dimensional Evaporation and Boiling Under Reduced Pressure2017

    • 著者名/発表者名
      K. Ogawa, Y. Yasumoto, M. Matsumoto, H. Wakabayashi
    • 雑誌名

      International Journal of Air-Conditioning and Refrigeration

      巻: 25 ページ: 1750003:1-9

    • DOI

      10.1142/S2010132517500031

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Evaporation and Boiling in Narrow Gap2017

    • 著者名/発表者名
      M. Matsumoto, K. Ogawa, Y. Yasumoto
    • 雑誌名

      Applied Thermal Engineering

      巻: 印刷中 ページ: -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Liquid Phase Change in Thin Gap Under Reduced Pressure2017

    • 著者名/発表者名
      Xu Dike, M. Matsumoto, K. Ogawa
    • 学会等名
      6th International Symposium on Micro and Nano Technology
    • 発表場所
      Fukuoka, Japan
    • 年月日
      2017-03-19 – 2017-03-22
    • 国際学会
  • [学会発表] MD Simulation of Sandwiched Liquid Evaporation2016

    • 著者名/発表者名
      T. Ao, M. Matsumoto
    • 学会等名
      Khujand Symposium on Computational Materials and Biological Sciences
    • 発表場所
      Khujand, Tajikistan
    • 年月日
      2016-09-24 – 2016-09-28
    • 国際学会
  • [学会発表] Dominant Factors for Quasi Two Dimensional Boiling2016

    • 著者名/発表者名
      K. Ogawa, Y. Yasumoto, M. Matsumoto
    • 学会等名
      26th International Symposium on Transport Phenomena
    • 発表場所
      Honolulu, Hawaii, USA
    • 年月日
      2016-09-21 – 2016-09-23
    • 国際学会
  • [学会発表] Evaporation and Boiling in Narrow Gap2016

    • 著者名/発表者名
      M. Matsumoto, K. Ogawa, Y. Yasumoto
    • 学会等名
      5th Micro and Nano Flows Conference
    • 発表場所
      Milan, Italy
    • 年月日
      2016-09-12 – 2016-09-14
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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